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わたしは、ダニエル・ブレイクのardantのレビュー・感想・評価

4.9
私はケン・ローチの作品をどういうわけか沢山みてきた。『天使の分け前』、『この自由な世界で』などの社会的弱者への暖かいまなざしとそんな社会への怒り、一方で、『麦の穂を揺らす風』、『ジミー、野を駆ける伝説』などのアイルランドという国に対する熱い想い。私は彼の行くすえを確かめようとしているのかもしれない。

私は、彼に、一つ確かめたいことがある。彼は、カンヌ等での自らの作品の受賞をどう思っているのだろうか。例えば、この作品で描かれたどうしようもない社会的矛盾、貧困を前にし、カンヌに集う富裕層達がそれを評価する。自分たちには関係ないと思っていることをだ。そして、作品を好意的に評価するのだ。『万引き家族』の受賞あるいは我が国での評価にも同じことが言えるかもしれない。社会学者、鈴木直子の言う「リベラリズムの仮面を被った生活保守主義者」達によって。

ケン・ローチは、社会変革のために、手段としての「映画という武器」(なんと、なつかしい響きか)を使っているように私には思える。
それが、今やワシントン条約でのレッドリストにも載りそうな希少種の「大義のためには敗北をも恐れない正統派リベラリスト」としての、彼の矜持であるはずだ。
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