moron

わたしは、ダニエル・ブレイクのmoronのレビュー・感想・評価

3.8
セーフティネットの(粗い)網の目から零れ落ちていく人びとの物語。官僚制とか物象化とか新自由主義とかその手のワードが脳裏にちらつく。はっきりいって地獄みたいな気分にさせられるし、役所仕事で嫌な思いをさせられた個人的な記憶が甦ってきたりする。しんどい。

意外とありそうでなかった作品だな、というのが率直な感想。あらゆるシーンにさらっと重みをつけてくるので、話の筋が読めようとも回避不可能なダメージを食らう。
尊厳をすり減らしながら、しょうもない規則を振りかざす役所のクズどもに歯向かうその雄姿に拍手して終わり、ではダメだと分かっている。といって、このクソみたいな制度をぶち壊すために、これといった何かができるわけでもない。泥水をすすらないために日常をやりすごすのが精いっぱいな自分を振り返って、その惨めさに死にたくなる。
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