コミヤ

わたしは、ダニエル・ブレイクのコミヤのレビュー・感想・評価

4.3
初ケンローチ。明確な社会批判を交えて、人の尊厳について考えさせる物語。でも重くなり過ぎないために要所要所で挿入されるギャグが笑えるし、登場人物も皆魅力的で愛おしく感じられる。
ダニエルはたまに暴言が過ぎるが、人との関わりや人としての尊厳を何より大事にしている。そんなダニエルの周りのサブキャラクター達は彼同様金銭的な豊かさはないが、人間同士が助け合うことで心的な豊かさを享受している。それに対して合理的に人間を管理しようとする社会のシステムは、まるで人をモノとして扱おうとする。ダニエルが一番許せないのは人間から尊厳を奪おうとすることだった。システムが出来上がることで自己責任という風潮は強まってくるものの、その規範に逸れた者全てを切り捨ててしまってもいいのか?そんな問題提起をする。

生ゴミを捨てさせる、庭で犬に糞をさせないなど"人としての規範"は何よりも守るのがダニエルだった。しかし"システムの規範"が自分が信じていた"人としての規範"を裏切ろうとする。そのために起こす彼の終盤のあるアクションは、"人としての規範"を逸脱したものであっても、人間としての尊厳を訴えるためにこうするしか無かったという哀しさが込められていた。

シンプルで所々笑えるものの最後には現実の残酷さと向き合わせる。もはや心的な豊かさだけでは生きていけない。今の日本にも置き換えられる普遍性のある話だった。
コミヤ

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