ちがぷー

わたしは、ダニエル・ブレイクのちがぷーのレビュー・感想・評価

3.8
20.01.18 Amazon Prime Video


巨匠ケン・ローチ作品は先日公開された「家族を想うとき」からの新参者です。
こっちを先に観たかった。
本作より「家族を想うとき」の方が生き地獄というか抜け出せない感がより大きくショックもその分大きかったため。


とにかくダニエル役の日本語ウィキのページすらないデイヴ・ジョーンズの良いタコオヤジ感。
一見粗暴で怖い人物なのかと思いきや、その実笑顔と優しさの溢れるとても魅力的な人間だと映った。


オープニングから杓子定規なコミュニケーションしかとらない典型的なお役所仕事をこなされている雇用支援手当の審査官とのやり取りは、まさにこの映画はこの人らとの闘いですよ、ということを指し示す。
1時間以上待たされる雇用支援のコールセンターや何度やっても上手くいかないネット手続きなど、一周まわって笑えてくる後に目頭が熱くなる現象に名前が欲しい。


ただ、公的機関はマニュアル通りにしか働かなくて本当に憎たらしいわねえ、融通を利かせるってことを知らないのかしら、と言わせる構造を持つ一方で、今置かれている状況は本当に自らに責任はありませんか?不可抗力により仕方なく置かれているのですか?というハッとさせられる自戒的な警鐘にもなっていると感じました。
どちらが正しいとか間違いとか、白黒ハッキリさせられるような又はすべきことではなく、こうした映画内で語られていることは履歴書の書き方講習のちょっと小金持ちインテリ風の講師よろしくただ単に"事実"として我々の現実世界と地続きで起きていることなのである、と感じました。