トランスマスター

わたしは、ダニエル・ブレイクのトランスマスターのレビュー・感想・評価

4.0
#41 貧すれば鈍する

UKのヒューマンドラマ
心臓に疾患を持つ元大工が主人公、役所で就業保障のWEB申請前提の煩雑な手続きでたらい回しに困っている。
2児の母のシングルマザーとの交流を通して貧困に屈しない人生を全うするストーリー。

◆良い点/注目ポイント
・プロテスタントの精神が息づいているため一部の利己的な人間を除いて基本的には困った人に手を差し伸べる成熟した社会、高い民度が垣間見えました。フードバンクのスタッフやスーパーのオーナーやスニーカーの密輸転売ヤーや役所前で出会ったホームレスなどとても利他的でした。
個人的なイメージなのですがユーロ圏の人って若い人が血縁でも職場の仲間でもない近所の老人と普通に友達になっちゃうところがとてもクールです。
・スーパーの万引きGメンは、予想通りの展開。娘のスニーカーを買う為に決断するところや、家の修理のお礼に自分のパスタをふるまってリンゴをかじっているシーンなど本当に切ないです。
・朝9時の葬儀は貧者の葬儀
その後のセリフは全てドスンときます。(オススメ)

◆改善点
・なし。

◆総括
・ダニエル・ブレイクは大工仕事は無理ならスニーカーの転売ヤーに相談して中国の富裕層に向けてオーダーメイド家具を作れば結構なマネタイズができたはずです。でも最後まで権威に媚びずに人生をまっとうした潔さは、エンペラー吉田の「偉くなくとも正しく生きる」を彷彿とさせます。

I, Daniel Blake.I'm a citizen.Noting more and nothing less.

-2020年 42本目-