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わたしは、ダニエル・ブレイクのdenのレビュー・感想・評価

3.5
コロナに苦しむ今だからこそ他人事ではなかったけどきっとコロナのない世界だったら可哀想だなあくらいで終わっていたと思う。助成金云々、10万円、休業補償が貰えるのが夏頃になりそうだと聞いて、それじゃあそれまでに何人も生活に困るし店も潰れるし、、と思ったけどその未来がこうな気がした。貧困問題という観点から考えると、ケイティはシングルマザーでお金も頼れる人もなく、たまたまダニエルがいたから助けてもらえていろんな意味で助かったけど現実には一人親家庭で誰にも助けてもらえず困っている人がたくさんいるのではないか?それに妻を亡くした孤独な老人という視点でダニエルを見ると、たまたま隣人やケイティたちとの繋がりがあったからパソコン操作を助けてもらったり、精神的にも繋がりがあったが、今日多くの老人がデジタル化の波にのまれパソコンの前で困り果てているのだろうか?頼る人も話す人もいないで世間から取り残されたような気持ちで家にいるのだろうか?
ディジタルディバイド、貧困問題、孤独な老人、ひとり親家庭、とかなり多くの問題提起をしている映画だが、やはりこの作品の主軸となるメッセージは「凝り固まったお役所仕事と貧困層の深い溝」にあると思った。その1日、1週間、1ヶ月がどれほど重いかを理解していない役所には思わず怒りが沸くが、ただ彼らは規律通り仕事をしているだけであまり責めるのも気が引ける。しかし、ダニエルもまたきちんと税金を納めて規律を守り生きてきたのだろうからダニエルに感情移入するとまた悔しくてどうしようもない気持ちになる。きっと誰も悪くないのだろう。どうして、いつからこの国の歯車は噛み合わなくなったのだろうかとやるせない気持ちになった。
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