10数年前自分は心を病み、日本でこうした申請とハロワに通う日々を送っていた。
当時20代の終わりから30代はじめ。体も動き、PCにも慣れていたこともあり、滞りなくできた。
しかし、ある申請については、誰も案内してくれる人はおらず、役所に行って聞いてみても、どうせあなたは支給の対象外、申請するだけムダといわんばかりのにべもない態度だったことは覚えている。
当時自分は症状が重かったため、その態度を受けてなお申請をする気力を保てず、諦め、次第にその存在すらも忘れてしまった。
数年後、ほぼ寛解まで状態が落ち着いた段階で、過去の分(5年まで)にさかのぼって請求ができることを知る。
申請書を時間をかけて準備し、幾度も役所に通った末に提出するも、結果は不支給。屈辱的な気持ちにさせられたものだ(教えていただいた支援機関の方には感謝の気持ちで一杯)。
スキあらば自分語り失礼。
だが、今作はそんな市井の人、1個人の、小さなしかし切実な物語。まるで自分のことのように感じた。現実はここから地続きなのだと。
I,Daniel Blake too.
搾取するものに優しくで、搾取されるものに厳しい。
虐げる側に寛容で、虐げられる側に不寛容なこの国の社会。
誰がそうさせた?
更に言ってしまえば、日本でダニエルのような行動を起こしたとて、道行く人の称賛すらも得られないであろう。
役所の人間も被害者だと。
仕事しなくても安心な金を稼いでこなかったのが悪いのだと。
金がなければ体で稼げばいい、それも仕事なのだと。
……ふざけるな!!
人を人とも思わないような態度を取らざるを得ないのだとしたら、そのような状況を作り上げた国に責任がある。企業や富めるものに利益が集中し、弱者を救えない社会は、間違っている。また、弱った人につけ込んで利用しようとする輩は、ぶちのめされるべきだ。
ふざけるな!ふざけるな!!ふざけるな!!!
と怒りに満ちていく一方で、登場人物たちのことを考えると、どうにも重たい気分になってしまって辛い。
終盤、物語にリンクするように、心臓の動悸が激しくなって息が苦しかった。誇張はない。心臓に持病はないのにそうなってしまった。
多方向から心抉られる作品でした。