ベルサイユ製麺

ローサは密告されたのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

ローサは密告された(2016年製作の映画)
3.9
フィリピン映画。ストーリーはごく単純です。
“ある罪により警察署に拘留された父と母の保釈金を集める為に、子供達が奔走します。”

観始めて先ず悩んでしまったのが、フィリピンの“普通”が分からないって事です。米英は参考資料(映画)が無限に有るので何となく日常も生活習慣も結構想像出来ます。韓国、中国、ヨーロッパもそれなりには…。それがフィリピンとなると、途端にボンヤリした認識になってしまいうのですよね…。
大きなスーパーで、小銭が無いからとお釣りを飴玉でもらう事、は果たして“フィリピンあるある”なのでしょうか?適当な場所でタクシーから降ろされることは?
…スーパーで両手一杯の食料品などを買い込んで息子と帰って来たのがローサ。日が暮れ、どしゃ降りの雨の中、帰路につきます。家は商店が立ち並ぶ活気溢れる通りに有り(新宿二丁目〜大久保の路地裏みたいな雰囲気)、カラオケで絶唱する若物、賭けトランプに興ずるおばさま達などで盛り上がる中帰宅すると、ダンナが「誕生日ぐらいいいだろう?」と…シャブやってます。(コレは普通?)
ダンナは気さくな良い人で、明るく皆に好かれるローサと共に家計を支える為にシャブ売りをやってます。(…普通?)
そこに突如、警察官が踏み込んできて、ローサと夫は拘留されるのですが、この警官達の横暴ぶり、腐敗ぶりがこの作品のテーマの1つでは有ります。一応「黙秘権と弁護士を呼ぶ権利が…」って説明はして、あとはテキトー&場当たり。シャブの売り上げ抜いて「チキンとビール買ってこい」、押収したスマホを着服。挙句、量刑をその場で気紛れに決めてしまう始末。…そもそも、連れて行かれる警察署!壁はなんだか築素材剥き出しで、不規則に貼られたポスター。バラバラの規格の机と椅子。小間使いのゲイの少年…。いくらなんでも盛り過ぎだろ、とか思ったら、ホントの警察署で撮ってるそうです!ヤバイ。どっちかというと、“反社会勢力の方が一時的なシノギの為に、仮に作った営業所”みたいな雰囲気です!
で、ローサ達には司法取引?的に、「×××を××したら解放ー」(←物語の核心付近なので×)、それも反故にされ、思いつき的に「10万ペソで保釈ねー」(←20万円位?)となり、ダネイホンとか作ってない子供達が金策に駆け回るのが、後半の山場になります。このパートが凄く良い!フィリピンの街並み、人々の普通の日常、更に金が絡む事で浮かび上がる、人情・醜悪さ・生のフィリピン感!
この作品、監督曰く“構想4年、撮影12日”だそうで(フィリピン映画的に12日が短いかは不明)、恐らく一台のカメラでズームもロングも対応してるモノだから凄いピンぼけとか平気でするのですが、それが逆に生々しさに繋がってる気がします。一方構成はとても良く練られていて、非常に自然。間延びもしない、良い編集です。演者がプロの役者であるかは不明ですが、ホントに佇まいが自然で街に溶け込んでいます。テーマの選定や、意外な雰囲気のラストの締め方も含め、日本で言えば是枝監督に近い資質の持ち主ではないかと思いました。意外と多作な方のようなので、観てみたい、けど…はたして。

劇中でシャブの事を、隠語で“アイス”と呼ぶのですが、作品の序盤のスーパーでアイスクリームを買って帰るシーンが有りまして、街の人たちが「アイスちょうだい」とか「うちでアイスあげるわよ」とか言ってるのが、果たしてどちらの意なのか混乱しました…と、そんなくらいフィリピンでも覚せい剤は普及してるのですね。アメリカでも清い貧困層がダブル・トリプルワークする為にシャブを打つと聞きました。凄い!日本産の覚せい剤が世界で認められている!覚せい剤=アイスなので、これからはシャブこそクールジャパンとして打ち出して行くべき。外国からの観光客向けのフリーシャブスポット(注射器から波が三本でてるアイコン)とか、オリンピックのマラソンでは給シャブコーナー作れば凄い記録出ますよ!…心停止者の数で。ボランティアだってガクブルのよだれダラダラで押し寄せます!
かつて台湾をアヘン漬けにしたみたいに、これからはシャブで世界中を骨抜きにすればいいじゃない!
クール ジャパン!クール ジャパン!(ジーク ジオンの感じでご唱和ください)