ローサは密告されたの作品情報・感想・評価

ローサは密告された2016年製作の映画)

Ma' Rosa

上映日:2017年07月29日

製作国:

上映時間:110分

3.8

あらすじ

ローサはマニラのスラム街で小さな雑貨店を家族で経営している。家計のため、少量の麻薬を扱っていたが、ある夜、密告からローサ夫婦は逮捕される。麻薬売人の密告要求、高額の保釈金……警察の要求は恐喝まがいだ。この危機をどう脱するのか? ローサたち家族は、彼らなりのやり方で横暴な警察に立ち向かう。

「ローサは密告された」に投稿された感想・評価

小一郎

小一郎の感想・評価

4.2
不満のない社会、悩みのない社会はないだろう。しかし不満や悩みを言える社会は幸せなのかもしれない。

<実際に起きていること、現実を見せたいといつも思ってい>て、<人々を教育し、人々に知らせるために>映画を作っているフィリピンのブリランテ・メンドーサ監督が描いたマニラのスラム街で懸命に生きる家族の物語。
(http://synodos.jp/culture/20085)

マニラのスラム街で小さなコンビニエンスストアを経営するローサ。4人の子どもを持つ彼女は、お店の売り上げだけでは生活できず、夫とネストールは少量の麻薬を売人から仕入れて販売している。しかし夫の誕生日、それが見つかり2人は逮捕されてしまう。

<フィリピン国家警察には長きにわたる汚職の歴史があり、同国で人権侵害的な法執行機関の最たる例が警察だと米国務省は明言している>(公式ウェブ)。そんな警察は釈放の交換条件として2人に金を要求し、ローサ一家は釈放のためになりふり構わず金を集める。

この日のトークショーで『ゆきゆきて、神軍』の原一男監督が次のように話していた。「人の感情を描くのが映画。歪みのない社会はないが、感情は社会の歪みから生まれてくる」。

社会の歪みに対するこの感情が本作には感じられない。麻薬を売ることの良心の呵責、警察に対する不満や怒りが見えてこない。人物の心理は描写されず、まるでそれが当たり前のことのように、麻薬を売り、釈放のために金集めに奔走する。

<彼らにとってはこれがいつもの、日常的な状況なのです。彼らは物事をあるがままに受け取る。彼らは感覚が麻痺してしまっているので、嘆きも抵抗もしない。そもそもほかに選択の余地もないのです>(http://synodos.jp/culture/20085)。

「衣食足りて礼節を知る」。逆に言えば、衣食足りなければ礼節など悠長なことは言ってられない。貧困に苦しむ彼らに、怒ったり、くよくよしたりしている暇はないのだ。

本作のハイライトの一つが、ローサの娘ラケルが転ぶシーン。<彼女はとても狭い路地を歩いている。ほかに道はありません。誰かが水を捨てる。別に悪意からではありません、仕事だからです。娘は滑り、転ぶ。でも彼女は文句も言わず、自分を転ばせた老婆をなじりもしない。ただ立ち上がって、歩みを続けるだけです>(http://synodos.jp/culture/20085)。

逮捕の日から翌日までの動きをドキュメンタリー風に描いた“硬派”でリアルな物語。最後の最後で、この映画唯一の心理描写といっていいローサの姿。カンヌの女優賞はこれで決まったのではないのだろうか。

●物語(50%×4.0):2.00
・ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が2016年6月30日の就任直後から麻薬、薬物犯罪者の殺害を容認、報奨金などに言及して奨励していることとの関連も注目されるけれど、フィリピンの社会構造を明らかにしていることが良いと思う。

●演技、演出(30%×4.5):1.35
・説明的な要素はなく、映像で実態を見せる。ラストのローサの姿は寝落ち厳禁。

●映像、音、音楽(20%×4.0):0.80
・手持ちカメラのドキュメンタリー風の映像が雰囲気にマッチ。
RYUP

RYUPの感想・評価

-

正と負のエネルギーを持ち合わせる作品。

光と雨。
SF映画のワンシーンの様なマニラのスラム街の姿。
迸るその場に活きる人々の熱意や鬱屈。
生きてく為に麻薬を売り生計を立てるローサ。
本来正義である筈の警察の腐敗。
この国が抱える慢性的な負のスパイラルを前に何が善で何が悪なのか?
境界線を見出せない。

物語はフィクションだが、
通してドキュメンタリーの様な撮影と演出。
嘘、裏切り、蛮行、罪。
我々が感じる
”非日常”は彼女達にとっての”日常”
ラストにローサの頬を伝う”涙”が市井の人々の気持ちを物語る。

この日常が非日常になる日は来るのだろうか…


監督 ブリランテ・メンドーサ
CAST ジャクリン・ホセ フリオ・ディオス フェリックス・ローコー アンディ・アイゲンマン ジョマリ・アンヘレス etc

原題 『Ma' Rosa』
2016年 フィリピン 110分

http://www.bitters.co.jp/rosa/
18/01/22
アップリンク
Gewalt

Gewaltの感想・評価

4.3
手持ちカメラというのは構図の美しさを損なうし俳優達の演技を十分に追えないことがあるのであまり好きではないが、こういう作風ならば手持ちカメラでなければ駄目だということに強い説得力がある。蔓延する麻薬とそれを取り締まる警察の腐敗という、今フィリピンにある現象をそのまま切り出したかのような本作にドキュメンタリータッチの画造りは極めて効果的だ。手持ちカメラの映像はそれに対して適切に作用してくれる。

実際にあるものをそのまま映したであろう、スラム街の映像は圧巻だ。第一幕ではそこにいる人々の暮らしと貧困、そしてそこに警察が立ち入る瞬間の緊張と衝撃を容赦なく突き付けてくる。特に雨が降りしきり鈍い光に包まれたスラム街は幻想的な美しささえ感じられる。
警察の取調が始まる第二幕は警察の粗暴さと腐敗が描かれる。「正規」の警察と区別される、制服を着ていないあの警察達は何なのだろうか。民間の協力者で半官半民の組織なのかと鑑賞中は思ったが、何れにせよカメラは警察の傲慢で堕落した有り様を我々に強く印象づける。
家族が再生へと向かう第三幕。両親の保釈のため、子供達は金を集める。やはりそういうこともあるのかと思わせるフィリピンの一面を覗かせながら、物語は終わりへと向かう。物語の前半のやり取りと対になる、ラストのある会話は荒んだフィリピンの中にある一筋の希望を見せている。

フィリピンにおいて現実に進行していることを「リアル」に伝える本作は、独自の手触りの映像の中に万人に伝わる衝撃を秘めている。
kyoko

kyokoの感想・評価

3.9
見逃し特集@アップリンク

圧倒的なリアリティに映画らしいドラマチックさが加わって、全く飽きさせない。日常に広がるフィリピンの風俗の描写が興味深かった。

そしてこれは家族の物語であったのか。窮地に立った両親を救うべく奔走する息子娘たちが健気。ラストのローサの表情には思いがけず涙が出た。彼女が抱いた感情は絶望ではなく家族と生きていくことへの希望だと思いたい。

それにしてもこの国の警察の腐りようと言ったらもう…言葉がない。
刑務所行きの代わりに密告させるシステムによって彼らは永遠にカモにありつけるのだ。
この先この日常が変化する日が来るのだろうか。貧困問題が解決しない限りこの国の先行きに光を見いだすことは難しい。


ローサのKISSのTシャツがいけていた。
hellomelci

hellomelciの感想・評価

3.8
「これ、ドキュメンタリー!?」とつい錯覚してしまうかのような圧倒的なリアリティ。スラム街で懸命に生きる姿に、一家の今後に思いを馳せずにはいられない。
(警察が汚職に塗れてズブズブなんだぜ…)

2017年見逃して悔しい思いをした映画のひとつ、上映してくれてありがとう!
spacegomi

spacegomiの感想・評価

4.0
のっけからカメラの動線一つで建物の構造や人物の位置関係を提示してみせる。手持ちカメラは揺れまくりで、被写体との距離は近く、雑多な喧騒、ノイズを必要以上に拾い上げる。基本的にドキュメンタリーのような手触りだが、取調室での壁1枚を隔てた密告を巡るサスペンスや、車のフロントガラス越しの捕獲劇など、映像の面白さにも事欠かぬ。貧困と密告の連鎖の鎖となる麻薬はもちろんのこと、スマートフォンが小道具として機能する。足りないお金を集めるために兄弟たちが奔走することでひとつ家族のドラマが生まれるが、その先々でもフィリピン社会の暗い側面が次々と映し出される。やっと手にした少ないお金で買った串をムシャクシャと頬張るローサのラストショットは非常に力強く忘れがたい。
KMD

KMDの感想・評価

3.7
なんて力強い。最下層で懸命に生きようとする人間と、搾取する側の人間との負の連鎖。それを終わらせることが出来る唯一の希望を見つめるラストカット。搾取側の心理まで踏み込んだらなお良かった。
ドキュメンタリータッチで描かれていて良かった!
本当にこれが警官なのか、、、
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