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エリザのためにの一のレビュー・感想・評価

エリザのために(2016年製作の映画)
3.7
『4ヶ月、3週と2日』のルーマニアの俊英 クリスティアン・ムンジウ監督作品

第69回カンヌ国際映画祭監督賞受賞作

暴漢に襲われたのが原因で、留学試験の合否が危うくなった娘を救おうとする父親の姿を描く

『ディーパンの闘い』を彷彿とさせるオープニングから始まり、特徴的な手持ちのカメラワークで映し出される徹底されたリアリズムが最高にツボで、なんとなくダルデンヌ兄弟の作品と重なるなんて思っていたら、案の定共同プロデューサーにクレジットされていました

父親が過剰に子供を思うあまりに医者という立場を利用し、空回りどころかある種の暴走行為が、元々脆い繋がりだった家族や周りの歯車が狂い始める

様々な展開で父親や娘や不倫相手までもの心の揺れ動きが丁寧に描かれ、暗く重苦しい作品ではあるものの、意外にもすんなりと見易く、気の滅入るような絶望にまでいったりもせず、先の読めないサスペンスフルなストーリーを純粋で楽しめた
なにより、この緻密な脚本と演出力に終始圧倒されてしまい、ラストの不思議な余韻は監督の凄まじいセンスという他ない

はっきりと答えを提示するような作品ではないので、当然犯人探しが軸になるわけでもないが、時間を忘れるくらい物語に入り込める素晴らしい作品だった
3作連続でカンヌの主要賞を受賞しているクリスティアン・ムンジウ監督恐るべし…👏🏻👏🏻

〈 Rotten Tomatoes 🍅95% 🍿83% 〉
〈 IMDb 7.3 / Metascore 84 / Letterboxd 3.6 〉

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