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エリザのためにのmjnkのレビュー・感想・評価

エリザのために(2016年製作の映画)
3.2
2019/10 CS録画。ルーマニア映画。現代の同国に住む父の数日間。『4ヶ月、3週と2日』(未見)のムンジウ監督作。なかなかしんどい128分でした。さらっと描かれる不正や治安の悪さも、一定の距離から引かないカメラもしんどい。
映画を観ているこちらからしたら父にも母にも娘にも色々言いたくなるのですが、その半面で全員の意見が「分からなくもない」感じ。この環境にいたら父のやり方も"もっとも"かもしれない。それに彼もかつては理想に燃えた人間で、この件の前までだって一定の正義を持っていたと示される。象徴的な公園での会話を見ながら「じゃあどうすれば?」とこちらは考えるのだけど、映画はその答えを明示しない。

そんな中で、まだ若い、だけど大人になろうとしている娘の行動はひとつの希望に見えました。
また、この物語はルーマニアという国そのものを表しているとも考えられると思うのですが、そう考えると彼女の行動とラストシーンは同国の"今より良い未来"を予感させるものに見えました。これが無かったら本当にしんどかった…。

映画からはズレますが、ルーマニアの首都ブカレストの地下に住む「マンホール・チルドレン(チャウシェスクの子どもたち/チャウシェスク政権時に生まれホームレスになった人々)」が数年前に話題になったと記憶しています。2019年現在、彼らはどうなっているのかと調べたら、どうやら一部逮捕されたらしい。マンホールも閉ざされたようだけど、そこに住んでいた他の人たちは何処へ行ったんだろう…。
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