MasaichiYaguchi

ラビング 愛という名前のふたりのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.6
僅か60年前、アメリカの約50%の州で異人種間の結婚が禁じられていた。
この作品では、バージニア州を舞台に一組の夫婦がこの悪法と闘った顛末が描かれる。
アメリカは自由・平等・民主主義を掲げていて、憲法で性別、国籍、及び肌の色に関係なく同等の法的保護を保証しているにも拘らず、異人種間結婚禁止法以外にもジム・クロウ法、ブラック・コード、インディアン撤去法、中国人排斥法等、様々な人種差別法が存在した。
人種差別法の代表格と闘うこのラビング夫妻は人権活動家でも、ジャーナリストでもない普通の人。
この普通の人である夫妻が望むのは特別なことではなく、生まれ育った土地で最愛の人と、その人との間に出来た子供たちと恙無く暮らしたいということ。
彼らは夫婦なら当たり前のこと、そして何よりも人として当然の権利、生得権を求めているだけだ。
人種差別法と闘う人々を描いた作品というと社会派ドラマになりがちだが、本作はリチャードとミルドレッドという2人の強い絆を軸にして純粋な夫婦愛ドラマを繰り広げている。
このリチャードとミルドレッドを、「ザ・ギフト」のジョエル・エドガートンと、「JIMI:栄光への軌跡」のルース・ネッガが、偏見や嫌がらせをはじめとした世間の強い風当たりや、官憲からの圧力や締め付けに翻弄されて苦悩、葛藤する様を交えて繊細に演じている。
社会から理解されず劣勢に立たされた夫妻だが、ミルドレッドが書いた一通の手紙によって活路が開かれていく。
人種差別法という大きな壁、社会に根強くある偏見、そういったものをラビング夫妻は、ファミリーネームが表すように強い愛で乗り越えていく、その勇気と信念に心打たれます。