てつこてつ

お嬢さんのてつこてつのレビュー・感想・評価

お嬢さん(2016年製作の映画)
4.8
この作品の劇場公開版を見て、韓国映画の魅力にどっぷりハマったと言っても過言でもない自分が、その後、様々な韓国映画を見続けてきて四年間、ついにこのブルーレイ版を購入し、スペシャル・エクステンデッド版も視聴。

何百本もの韓国映画を見尽くしてきたけれど、「お嬢さん」は、イギリスのミステリー小説を1930年代の日本軍統治下の韓国に舞台を置き換えたアイディア、パク・チャヌク監督ならではの圧倒的な映像美、二転三転する緻密なストーリー展開、俳優陣の確かな演技で、自分が見てきた韓国映画の中ではTOP5には入るし、オスカーを獲った「パラサイト」よりも個人的には好み。

初見では、やはり、典型的な美人ではなくとも、妖艶で圧倒的なオーラがあるキム・ミニ、ハ・ジョンウ、この作品がメジャー作品とは思えない体当たりの演技を見せたキム・テリばかりに目が奪われたが、韓国映画を一回りして、こうしてもう一度見てみると、沢山の作品で名演技を見せているチョ・ジヌンやキム・ヘスクが、実に上手いことに改めて気付かされる。二人とも、日本語の台詞がアクセントも含めてとても上手い。この辺りにベテラン俳優のプロフェッショナリズムとしての役作りのしての拘りが感じられる。

舞台となる武家屋敷と英国貴族の館を組み合わせた建物の再現も素晴らしい。外観は、三重県の桑名にある建物で、内観は全てセットを組み立てたとか。特に、ストーリーで重要な意味を持つキム・ミニ演じる秀子が朗読するシーンで登場する図書館は芸術的なレベル。

日本語を喋る登場人物の中で、唯一、純の日本人役であり、且つ、朗読シーンなど肝となる場面では、完璧で流暢な日本語を話す必要があったキム・ミニの日本語が、やや残念であった事を除けば、ほぼ個人的には完璧であったこの作品。

エロスという概念を、最高の役者陣を揃え、芸術作品として昇華させた手法は実にお見事。日本映画がこのクオリティの作品を、今作り上げる事は、これくらい身体を張ることを厭わないトップ女優もいないだろうし、残念ながら不可能だろうなあ。
てつこてつ

てつこてつ