ぐっさん

お嬢さんのぐっさんのレビュー・感想・評価

お嬢さん(2016年製作の映画)
4.2
すごいものを観た感、圧倒的な余韻…!
個人的にはパクチャヌクの最高傑作だと思う。
ただすごく好き嫌いが分かれる可能性のある映画であることも確かで。1930年代、併合時の韓国を舞台にしているということで、登場人物達が日本語と朝鮮語を話す。演じているのは当然韓国の俳優ばかりなので、日本語はちょっと拙くて、でももちろん字幕は出ない。ここが多分賛否の分かれどころなのか、乗れない人は乗れないかも。

しかし、ちゃんと集中して聞けば何を言っているか全然わかるし(というかこの体験がこの映画のキモだと思う)、言葉の拙さからくる独特のオフビート感が、台詞の強烈さをどこかおかしみを持って受け取れるようにし、それがまた世界観の不気味さを演出するのにも繋がっているし、パクチャヌクは絶対そこを強く意図してると思う。
シリアスな展開の中に笑いどころをいくつか用意してることからもその意図は明らかだし気づいたらズップリハマってる。
というかこの感覚って日本人にしか味わえないんだし…!

とにかくセリフ回しの異様さ、造形としておかしみがありつつも圧倒的に美しい映像美の数々。第一部〜第二部へ展開する秀子(キム・ミニ)の素晴らしい表情と演技。素朴さと粗野さ、少女〜女へと、匂い立つような女性性までも見せるスッキ(キム・テリ)「おっぱいをあげられたら〜」の意味が変わる展開とか見事!
最低と最高を行き来しつつ時に爆笑までさせてくれる至高すぎる伯爵(ハ・ジョンウ)。
2時間半グイグイ引き摺り回されて、どこへ連れていかれるんだ!と思う感覚はまさに映画的。
近作だと「マジカルガール」や「ロブスター」、「クリーピー」みたいな、現実と地続きなようでいて逸脱した世界の異様さと激しい官能と、そして乾いた笑いまでも融合したすごい作品だった…春画と朗読の薄気味悪さ、3部構成での視点転換の見事さ、何故3本タバコを吸ったのかの伏線までホラーやミステリーとしての見どころも抜群な傑作だった!
願わくはソフト化の際、性描写もセリフもそのままで…!
ぐっさん

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