かじられる

お嬢さんのかじられるのレビュー・感想・評価

お嬢さん(2016年製作の映画)
4.1
それにしても、何故に男性が抱く企てはいつも猥雑なんで御座いましょう。夢うつつで余所見していらっしゃる。

蛇を隔てて収集された猥本の数々は脳髄に潜む欲望そのもの。朗読など、力と従順で生み落とされたお遊戯に過ぎませんのに。

いえ、
私がお嬢様にお教えしたのはありふれたコイトゥスではございませぬ。

熟れた果実を貪る、甘い、甘い、雫と、したたるばかりの喜悦に御座います。

あの束縛に満ちた屋敷から羽ばたくには、しとねを濡らすほどの灼度の口づけが、荒波のような頂きが、幾度となく必要で御座いました。

云うなれば自由に翼を添えた体感。似非ではなく、肌と肌を打ち合わせる媚声、而して紐帯。

最早お嬢様が地下室に怯えることはありますまい。就中、あの墨汁で染まった闇からも。

私達は気化した水銀のように消えたのです。数珠の痛みは、早や記憶のもずく。波の音だけが日々訪って御座います。
かじられる

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