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お嬢さんのhiroのレビュー・感想・評価

お嬢さん(2016年製作の映画)
4.4
設定4/脚本5/役者4/映像音楽4/個性6

今までまったく見たことのないジャンル。やはり強烈だったのは濡れ場だが、それ以外に見処がたくさん。
2017年韓国映画、いい意味でぶっとびすぎです。

原作は2002年イギリスのレズビアン作家による歴史犯罪小説。19世紀ビクトリア朝時代のロンドンが舞台で、前半は設定もあらすじもほぼ同じだそう。これをパク・チャヌクが1930年代日本統治下の朝鮮に再構築。
原作を知りませんがこの設定移植はド肝を抜かれた。日本の春本との相性たるや!また令嬢⇔侍女の関係に日本⇔朝鮮という立場の違いが加わりより抑圧的な状況下が描かれている。なんだかすんなり移植してるけどすっごく難しいことだと思う。この映画最大の衝撃でした。

令嬢の屋敷をはじめセットが綺麗。なぜかハリーポッターの秘密の部屋を連想したが、とにかくミステリアスでファンタスティックだった。美術が凝ってるなあと感心してました。

そして侍女役のキム・テリはなんと新人!濡れ場だけでなくコミカルなシーンや感情的なシーン、そつなく堂々とこなしていて脱帽でした。令嬢より美人っていうのは設定に逆行してたけど笑。台詞の半分ほどが日本語ですが、彼女の日本語だけは明確に聞き取れた。他の役者は失礼ながら字幕が欲しかったかな。。

物語は何度かのどんでん返しも含め「誰が誰を騙してるのか」を解くミステリー構成だが、「良質な官能映画」と言う方がイメージ。濡れ場を多用する映画はあまり好きではないですが、今回は意義を感じられる内容だった。

★★★以下ネタバレあり★★★

一貫して抑圧からの解放を描いており、それは日本の統治という付加要素もあるが、主にジェンダーの話。令嬢は叔父からの変態調教から(これもSMとかで描かれるのかと思いきやエロ本の朗読だったから笑った)、侍女は詐欺師に駒として扱われる状況から、逃れるために策を練るが、その解放の過程が女性同士の性行為による快楽を通して描かれているのが最大の特徴。侍女が令嬢に魅了されていく過程、仲違いする過程、男共への復讐の過程、それぞれに色っぽい場面があり、その解放の"絶頂"に達するのがラストシーンなんだと解釈。「エロ(百合)をもってエロ(変態)を征す。」不思議な不思議な映画でした。

2018-5(4)
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