磔刑

お嬢さんの磔刑のレビュー・感想・評価

お嬢さん(2016年製作の映画)
4.4
「快楽は虚構の中で」

いやー頭おかCー。いや、マジ狂ってるでしよ。題材的にスゲー下品な話なんだけど、上品に仕上げてるのは感心するし、だからこそ鑑賞と賞賛に値してる。やっぱ近年の映画クオリティにおいては兄さんの方が優れてて感心する。でもなんか一回観ただけで胸焼けしそうで2回観たいと思わんから不思議やね。

話は鈍重やし、イマイチ登場人物に感情移入できへんから退屈に感じる部分はあるんやけど、ビジュアルの美的センスが高くて視覚的に楽しめた。ロケーションやセットの美しさ。それとセックスシーンの大胆さ。後者に至っては大体下品極まる内容なんやけど、美しさを感じるように演出する辺りが兄さんの技量の高さを物語ってるね。
日本独自のSM文化や春画をリスペクトし過ぎて作られた感が強くてその変態加減の熱量の高さも日本人から見てても圧倒される。春画の一番スゲーって部分にやっぱタコ持ってくる辺り「あぁ…やっぱタコなんや…」って謎の納得感あったね。自分的には触手プレイは性癖の琴線に触れないが。

終盤のエロ小説大量破棄するシーンはカタルシスあった。エロ漫画家のツイッターに突撃するフェミさんのブチギレみたいで。そりゃやっぱ創作とはいえ女性からしたら愉快なもんじゃないのは確かだしね。ましてはそれを強制的に読ませるわ実践するわって倫理観の許容範囲超えてるよね。やっぱエロ文化はアンダーグラウンドで人に迷惑かけずに活動してこそ許される文化だわ。私的にも声の大きいオタクって嫌いやわあ…。

あと、今作のテーマって創作物と現実を混同した人間の愚かさだと思う。ほら、エロ漫画やAVに感化されて実践するバカってごくごく稀にいるやん。そういうバカにならないように警告してくれる反面教師的な作品。
でもたまにエロ漫画が性犯罪を増長させるってロジックで規制強めようとする人っているやん?そこに対する皮肉も多分にあると思うよ。だってこんだけエロ漫画が氾濫した日本の方が他の規制が強い先進国よりも性犯罪率少ないからね。つまり、規制を求めてる人間こそフィクションと現実の区別がついてないんじゃねぇかと。

日本人がゴリゴリのヴィランでそれを韓国人が描いてるって構図は余計な勘ぐりを生みそうだが、悪意があっての事ではないと個人的には思えた。たしかに日本人である意味はそれほどないとは思う。日本文化に感化されたヤベー韓国人でも成立するからね。でもこの異国の人間による悪行って構図はホラー映画としての訴求力を高める上では非常に重要なんよ。
『テキサスチェーンソー』のような田舎に行ったら襲われた系。『ホステル』や『食人族』のような海外行ったら襲われた系。このよくある二つの構造で共通するのは自分の住んでる地域や国とはかけ離れた場所で惨劇が起きる点。つまり、知りもしない場所で起きる事なら“ありえるかもしれない”って納得感を鑑賞者に促す作用があるということ。
今作が仮に日本が舞台なら「そんなやつ日本にいねーよ」って一蹴するだろうし、おじが韓国人の設定だったら韓国人も同じように思っただろう。だからそこ、韓国人目線での異形の人間が成立する日本人でなければ作品の説得力は成立させることはできない。だから決して日本人に対する熱いヘイトじゃないので、その辺は理解してあげないとね。

エロを題材にするとどうしても話が安っぽくなる。『アイズ・ワイド・シャット』みたいに。でもそうはならず、映画としての見応えと芸術性を併せ持って完成させてるのには感心させられた。とにかくこんな変な題材を強い熱量を持ってここまでのクオリティに昇華してるのは単純にスゲーなと思った。めっちゃ完成度と芸術性が高い広辞苑ぐらい分厚いエロ同人誌を読んだような感覚。
でもホント韓国映画って鑑賞後謎の疲労感に襲われる。だから韓国映画ってだいたい年一作ぐらいしか観いへんし。つまり次は『パラサイト』が円盤化まで無いってことだ!!えっ?今劇場でやってる?ヤダよバカデケースクリーンで観たら精神どうなるか分かったもんじゃねーわ!!!
磔刑

磔刑