『別離』がとても面白かったので、本作も観てみました。
劇団に所属している夫婦の日常が、妻が暴漢に襲われた事件を境に変化し、危ういものとなる。
『別離』ほどではなかったけれど、相変わらず鋭い目線を持った作品だなぁと感じる。この監督の作品は他にもまだ観ていないのがあるので、追っかけていきたいと思う。
ひとつ前に『最後の決闘裁判』を観たのだけど、それと本作の設定がよく似ていることに気付いて苦笑しちゃった。偶然にしても参ったね…。
終盤の真相が明らかになる瞬間は、息を飲んだ。真相を追っている夫と同じように、観ているわたしもそう思い込んでいたから。
一度思い込んでしまうと、中々、それから抜け出せないものだけど、夫はそれさえも取っ払うほどの執念だった。
一方で、解決には消極的にすら見える妻の本音は、ただ忘れたい、そっとしておいて欲しい、日常を取り戻したい…といったものであるのだ。
大きな脅威や突然の暴力にさらされた時、思考は停止する。しかし、再び動き始めた思考が今度は、自分を責めるものに変わっていく。その後も、その時々で感情がコロコロと変わり、渦巻いて、ずっと続いていく。そして徐々に疲弊していくのだ。