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セールスマンのandhyphenのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
4.0
タイトルの「セールスマン」は主人公夫婦が所属する劇団で上演される「セールスマンの死」から来ているのだろう。この劇は物語の絶妙な合間に劇中劇として挟み込まれて効果を上げる。
家が突然崩壊し引っ越した先で妻が襲われる。事を公にしたくない妻の思いとは裏腹に夫は犯人を追うが、最早それは妻の為ではなく自分自身の憤懣をぶつける為になされており、夫婦はすれ違う。
妻が事件を語りたがらない(それは当然であろうが)ことも恐らく夫を苛立たせている。
心理描写がとにかく絶妙で、分かり合えないとはこういう事なのか...とやるせない思いになる。夫は正義で追い詰めているようでいて、最早悪意しか表出しなくなっていく。観ていてもうやめて欲しい...という気持ちに駆られてしまった。
最後は何かが解決するという形でなく観る者に委ねるかのように終わる。答えのない終わり方だが、これ以上ない結末だと思う。どんな解決を提示してもこの物語は大団円では終われない。
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