てるる

セールスマンのてるるのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
3.5
2017年アカデミー賞で外国語映画賞を受賞したイラン・フランス映画。

教師であり、舞台役者でもある主人公と、同じく舞台役者の妻。夫の帰りが遅くなったある日、引っ越したばかりの家で妻が暴行に遭ってしまう。必死に犯人を探す夫と、傷を負った妻の間には段々と溝が出来てしまう。果たして犯人は誰なのか、この夫婦が出す決断とは。

実は先日閉会した国会で騒がれた共謀罪の影で性犯罪が厳罰化する法案が通った。今まで親告罪だったのが非親告罪となり、罪も重くなった。
個人的には、心の殺人と呼ばれ、被害者の人生を壊し、時に周りの人々の人生までをも壊す強姦罪などは今回の改正では足りない部分も多いと思うし、もっと厳罰化しても良いとさえ思っている。
そして収監は屈強な外国人ばかりの刑務所に入れるべきだと思う。目には目をじゃないけど、そこで同じ恐怖を味わうべきだと思う。

だから妻が暴行に遭ってしまい、文化的で穏やかな性格だった夫が変わっていく様は観ててツラい。特に序盤は危険な時にも人助けをする場面などが描かれるから尚更。
彼が事件後に取った行動は少し歪んでしまったとはいえ妻を愛しているからだろうし、最後の決断もそうだと思う。だからこそ気持ちは分かるし、彼を責められない。個人的にはいくら魔が差したとはいえ絶対に許せない。
対する妻の行動もまた理解も出来るし、全て忘れたいのに忘れられない気持ちも分かる。

この映画は普通の人々がふとしたことで悪魔にも豹変するし、赦すことも出来ることを描く。例え救われない結末だとしても。

でもこのタイトルの基になっているのが、劇中劇である「セールスマンの死」という戯曲で、おそらくストーリーとリンクしてるっぽいんだけど、そもそもその話を知らないのでしっくり来なかったのが残念。

でも1番怖かったのは妻が間違って開けたドアをしばらくカメラが写すところだったな。
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