やまぞう

セールスマンのやまぞうのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
5.0
いや〜アスガー・ハルファディ監督は、日常に潜む誰もが陥る闇を描くのが上手い!

小劇団で俳優活動をしている夫婦に、ある日突然襲いかかる暴行事件。

事件を表沙汰にしたくない妻は、警察への通報を拒否し、夫は独自に犯人捜しを始めるのだが...

途中から、妻を思いやる気持ちはそっちのけで、自身の自尊心に囚われてゆく男の心理に不穏な空気が蔓延してゆく。
いや、アンタ、一番傷ついてるのは誰か理解してるん??

それは愛じゃないだろ。と、観てて思うが、人間とはかくもそういう闇に囚われがちな生き物なんだよなぁ。

それにしても、このお話の発端であるマンション倒壊だが、何十人の人が住むマンションの横で住人が着の身着のままで逃げ出さなければならない工事を、何の警告も無く、何の保障もなく行うってどうよ?

イランの行政は一体どうなっとるねん。

「彼女が消えた浜辺」は、海と砂浜に打ち寄せる波が、物語の不穏なメタファーとなっていたが、今作は倒壊寸前のマンションがその役割を担う。

傑作。
やまぞう

やまぞう