アカデミー賞外国語映画賞を受賞したイランの作品。
タイトルは「セールスマン」だけど、スーツを着たいわゆるセールスマンは登場しない。
夫婦は同じ劇団員。上演しているのが「セールスマンの死」というタイトルの舞台。
初日を終え、引越ししたばかりの家に、先に帰った妻が部屋でひとり。そこに夫が帰ってきたと思って、ドアを開けると、知らない男が部屋に入って妻が襲われるという事件が・・・。
この事件までが少し長く感じたけど、ここから夫の犯人探しというミステリー的な展開。
犯人が部屋に残したモノと、この部屋に住んでいた“ふしだらな商売をしていた女”を手掛かりに犯人を探す。
夫にとっては復讐かもしれない。妻にとっては恥であるかもしれない。近隣を気にする夫。警察沙汰にしない妻。感情がすれ違っていく。
機微な問題であることは、イラン映画だからではないと思う。
近代化はしたが伝統的な考え方は、まだ残っている。昨年みたトルコ映画「裸足の季節」にも通じるし、変わったように感じる日本でも、実際はそんなに変わらないと思う。
ミステリーで物語の興味を維持させながら、とてもヒリヒリした人間ドラマだった。