木葉

セールスマンの木葉のレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
3.9
この監督の、彼女が消えた浜辺、別離、ある過去の行方と3作品観てきたが、私には彼女が消えた浜辺しか心に残らなかったので、あまり期待せずに、観た。
しかし予想を遥かに超えて良かった。自国イランで描くと、いろいろ制限や縛りもあるが、力が発揮される監督。
イランという国の不自由さ、宗教観、人々に植え付けられた偏見もよく分かったし、何よりセールスマンの死の戯曲と並行して描かれてることが良かった。
物語は、夫婦が引っ越し、引っ越した先で妻が何者かに襲われ、夫婦の日常が一変する。思いやりのあった優しい表情の夫はキレやすく険しい顔になり、妻はトラウマから恐怖と絶望しかなくなる。
イランという国で女性の生きにくさが浮き彫りにされて、女性の視点から観たら辛い。
最初から陰鬱な画面から始り、淡々と進み、多くを語らず劇的に変化するわけでもないのだが、終始とても緊迫し、私は不安と緊張に駆られていた。
監督の人物像の描き方が超一級。
幸せなひとりぼっち、ヒトラーの忘れもの、ありがとうトニーエルドマンと観てきたが、今作がアカデミー外国語映画賞を受賞したのも、頷ける。
不自由さ、縛り、制限も越えてこの作品を観れたことには感謝しかない。
木葉

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