柏エシディシ

セールスマンの柏エシディシのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
3.0
「別離」と同様、思いや言葉の掛け違いが主人公たちを取り返しのつかない所に連れていってしまう悲劇を、これ以上ないくらい、じっくりしっかり隙無く紡いでくるイランの名匠ファルハディ。ほんと、この人の映画は情け容赦ない。
ラスト30分ぐらいの息をするのを忘れる様な緊迫感。堪りません。

どうしたってイランという国やペルシャ語圏の文化や慣習が作品に通底するのを極東の観客としては感じてしまうのだけれど、それでも「掛け違い」による悲劇という、普遍的で共感出来る物語に昇華出来ているのが、やはり凄いと思う。
こういう映画を観た時、映画という芸術の偉大さを改めて感じます。

自分の浅薄な知識では、戯曲セールスマンの死と本編のテーマの対位の有効性や必然性がぼんやりとしてしまっているのが歯痒い。
アメリカの近代化の歪みとイランの街の歪みの重なり。主人公の虚勢が愛する人を遠ざけてしまう悲劇という符合。この辺りしか、現状分かっておりません。勉強します!先ずは明日のムービーウォッチメンだなっw

演者がみな上手いのは言わずもがなですけど、個人的には主人公夫婦の家にご飯を食べに来る友達の子供が自然過ぎて驚いた。無邪気なんだけれど、大人たちのビミョウな空気の変化を察した時の表情とか、うますぎる。
子役演出の上手い監督は名監督の定説通りですな。
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