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セールスマンのbnftのネタバレレビュー・内容・結末

セールスマン(2016年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

このカットの意味はこれとあまり決めつけたくないので、本作のラストはオープンエンドなのだと考えます。
ラナとエマッドはエンディングの時点では終わり切ってないでしょう。
それにはまた別の物語が続くはず。それ位の描写の積み上げはあったはずです。


エマッドはラナとの約束は破っていない。別の破局を招いていて責任の一端は免れないが、ラナの理性と倫理がどこまで理解してどう右か左かの白黒をつけるのか、付けないのかも分からない。その後の舞台に二人がいるのだから。交わす視点の意味を視聴者が一意に決めることなんかできない。そういうラストだと思いました。

ラナは彼女の思いとズレながらもエマッド自身のエゴさえもラナを軸にしか動いてない事すら突き放してしまうのか。

男の馬鹿さ加減なのかもしれないけど、付いていけないが見捨てないというラナの倫理感、警察沙汰にしたくないラナへの裏切りを反転して他者の想いを近い人間(エマッド)へも適用して、時間が許容と理解へ動くことを期待したい、そういうラナでした。ファム・ファタールがそんな単純では面白くない。

エマッドはテストステロンの支配下からの抗いをも見せている、ラナはそこを思い測らないのだろうか。

女性心理という一般化から独立したラナの人間としての倫理的知性を信じたい。そういう男の儚い願いを表した映画とも読めないでしょうか。
非常に個人的な偏った見方ですが。結局エマッドに肩入れラナを客体としてしてみてしまって部分は否めないのだけれど。分かれよと言われると二の句が継げないけど、それでもラナの心がとても気になります。

あとは、イラン文化ローカルを感じさせない神話的物語類型に則った普遍性のあるドラマ展開が意外でした。
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