LalaーMukuーMerry

セールスマンのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
4.3
イスラム世界の映画というと、私の中ですぐに思い出すのは「別離」、「運動靴と赤い金魚」などの印象的なイラン映画。政治の世界ではアメリカと対立し、北朝鮮と裏の太いパイプで繋がっているとても怪しいイスラム原理主義の国という印象なのだけれど、イラン映画に登場するのは、人として私たちと同じように笑ったり泣いたり、同じように善悪を感じとり自分の言葉で話す人々だから、共感出来てとても親近感がわく。この作品も宗教色は全くなく、主人公の夫婦はアメリカの演劇作品を上演している。戦前の日本のように、敵性国アメリカのものは何でもダメ、というようなことはイランでは全然なさそう。だから(北朝鮮と違って)イランの印象は私の中では結構よい。映画の力は政治に勝るということですナ。
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「セールスマン」というタイトルからはストーリーも主題も全く想像できなかったので、それに音楽が無いせいもあって、とっつきにくい始まり方だったのだけれど、事件がおきてから物語が突然シリアスに動き始め、俄然ストーリーに入り込んでいきました。こういうことは、イランだけでなくどこの国でも起こりうることでしょうから。
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許しがたい事件が妻の身にふりかかり、夫は犯人を見つけ出そうと動き始める。復讐は良くないし、もう少し妻の気持ちにもなってあげれば、と日本人なら感じるだろうと思っていた矢先…、それだけでは終わらずもう一つエピソードを絡ませてくるあたりが、深みの増したよい脚本でした。「別離」の監督(アスガ-・ファハルディ)でしたか、ナルホド。この監督は、どうしたらよいか迷うような実に微妙なシチュエーションに観客を陥れるのがうまいですね。