takamaru

セールスマンのtakamaruのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
4.0
道路工事の影響で住居が破壊され、新しい部屋を探さざるをなくなる夫婦。教師として働くエマッドと妻のラナは、所属する劇団の友人に紹介された部屋に住み始めるが、前の住人がしていたことが原因となり、ある日、思いもよらない悲劇に襲われる…。ガタガタ揺れる部屋、亀裂が入る窓。何かが起こりそうな不吉な予感がずっと漂い続け、音もなく静かに開く扉をきっかけに運命の歯車は狂いはじめる。そして狂い始めた歯車は、どこでどう止めたらよいのか誰にもわからず回り続ける。エマッドは部屋に残された痕跡から、エマを襲った犯人の正体を突き止めることに、心身を囚われていく。残された車のカギそして金。手がかりを失ったかもしれない事態に動揺し、雑な運転をするエマッド。その感情の見えない表情。そして執拗に事実を追いつめ、目の前で探し続けたその男と対峙したとき、その常軌を逸した行動が、妻との意識の違いを浮き彫りにする。だけど、じゃあどうしたらいいというのだろう? 「精算をする」といって男に突きつけたビニール袋は、決定的に人間の心を破壊する。エマッドとラナの心に何が残されたのか。映画は感情がまるで見えない二人の表情を映して幕を閉じる。

立川シネマシティにて。小劇場の品質感のある空間。学校の授業の風景。若者たちのファッション。イランという国の今を見ることができるのも印象的。
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