みけ

セールスマンのみけのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
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イランで「セールスマンの死」を演じる夫婦。ある日、マンションにひとりでいた妻が、闖入者に襲われる。夫はその復讐に躍起になり、夫婦の間にはすれ違いが生まれていく。この作品は、まさに「セールスマンの死」のテーマに重なり合う。
作品の中で繰り返し強調されているのは、イラン社会の中の男性中心主義という保守性である。
検閲・娼婦役への抵抗といった描写は、社会の中に潜む男性中心主義への伏線となっている。
何よりもこの作品で焦点があてられているのは、「セールスマン」すなわち夫の、自意識だ。
彼の苦しみ・そして復讐は、彼自身の男尊女卑の発想の反映でしかない。
夫が妻の気持ちを置き去りにして、自分が抱かされた「恥」の復讐のために、犯人捜しに躍起になっていることは明らかである。
この哀れな「セールスマン」を本質的に苦しめているのは、妻の不安定さでも、周囲の無神経さでもない。彼自身に根付いた男尊女卑なのだ。
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