セールスマンの作品情報・感想・評価 - 68ページ目

セールスマン2016年製作の映画)

Forushande/The salesman

上映日:2017年06月10日

製作国:

上映時間:123分

3.7

あらすじ

作家アーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」の舞台に出演中の夫婦。夫は教師をしながら、小さなの劇団で妻とともに俳優としても活動している。 ある日、引っ越ししたばかりの自宅で、夫の留守中に妻が何者かに襲われ、ふたりの穏やかだった生活は一変する。事件を表沙汰にしたくないと警察への通報を拒否する妻の態度に納得できない夫は、自分自身で決着をつけるべくひそかに犯人捜しを続ける。 演劇と犯人探し、夫婦…

作家アーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」の舞台に出演中の夫婦。夫は教師をしながら、小さなの劇団で妻とともに俳優としても活動している。 ある日、引っ越ししたばかりの自宅で、夫の留守中に妻が何者かに襲われ、ふたりの穏やかだった生活は一変する。事件を表沙汰にしたくないと警察への通報を拒否する妻の態度に納得できない夫は、自分自身で決着をつけるべくひそかに犯人捜しを続ける。 演劇と犯人探し、夫婦の感情のずれがスリリングに絡み合い、やがて物語は思わぬ展開に…。

「セールスマン」に投稿された感想・評価

andhyphen

andhyphenの感想・評価

4.0
タイトルの「セールスマン」は主人公夫婦が所属する劇団で上演される「セールスマンの死」から来ているのだろう。この劇は物語の絶妙な合間に劇中劇として挟み込まれて効果を上げる。
家が突然崩壊し引っ越した先で妻が襲われる。事を公にしたくない妻の思いとは裏腹に夫は犯人を追うが、最早それは妻の為ではなく自分自身の憤懣をぶつける為になされており、夫婦はすれ違う。
妻が事件を語りたがらない(それは当然であろうが)ことも恐らく夫を苛立たせている。
心理描写がとにかく絶妙で、分かり合えないとはこういう事なのか...とやるせない思いになる。夫は正義で追い詰めているようでいて、最早悪意しか表出しなくなっていく。観ていてもうやめて欲しい...という気持ちに駆られてしまった。
最後は何かが解決するという形でなく観る者に委ねるかのように終わる。答えのない終わり方だが、これ以上ない結末だと思う。どんな解決を提示してもこの物語は大団円では終われない。
あおい

あおいの感想・評価

3.5
闖入者が残した傷は、深く、心にまで…

初イラン映画劇場鑑賞は今年度アカデミー外国映画賞受賞の今作!時代はイランに傾いている!ハズ

◎ストーリー
昼は教師、夜は演劇俳優のエマッドは同じく俳優のラナと順風な夫婦生活を営んでいた。あの夜の闖入者が現れるまで、、犯罪への報復は醜い復讐と化すのか?真っ当な正義か?

中々良い雰囲気で始まり、静かながら続きの気になる見せ方が素晴らしかった。終盤の盛り上がりからの最後の一転は予測不可能。そこまでは良かったです。でも、そっからがどうも腑に落ちない。やるならとことんやって欲しかった。誰も報われないあの無常観も嫌な後味でしたが、オチとしてはスッキリしないのがなんとも。

途中で挟む演劇シーンは物語に特に影響が無かったのは残念。あの演劇について知ってたらなにか変わったのかな?

見た人に色んな解釈をさせるのがイラン映画のいい所でもあるんでしょう。今まで見てきた、イラン映画の中では映像も綺麗で、お話もいたってわかりやすくハリウッドに遜色ない出来でした。

あとは俳優さんたちが良かった( ^ω^ )憔悴した演技から復讐に駆られる演技まで、とても表情豊かで見てて飽きない。ちびっこ俳優くんも可愛い演技!聞き取りやいペルシア語でなおキュート!

セリフのないシーンも多くて、キャラの心理描写が上手い監督やなと思いました。トランプに反対して、受賞式をボイコットしたのも粋な判断。頑張れ!イラン!🇮🇷

原題はفروشندهで直訳してセールスマン。これも物語と大きく関わるわけではなかったように感じましたが、やはりそこは自分の知識不足なんやろなと思いました。

イランではレイプとかそういう性的犯罪は少ない印象で、性に関しては厳し目やと思ってたけど、娼婦とか普通にあるんやな。変態が多いのは知ってたけど実力行使を行う者がいたとは…まだまだイランのことは知らないことばかりやと痛感。

2017年劇場鑑賞17作目
暴行事件の被害者だが表沙汰にはしたくない妻と、怒りに駆られ犯人を見つけ出そうとする夫。自分の大切な人が傷つけられたら、と考えると夫には大いに共感できるけど、徐々に「誰のため」が曖昧になり、良いことをしてるはずやのに自分が責められているようで、どうしようもなく息苦しくなる。この気持ち何処にぶつければ
笑えないセールスマン

なんてことはさておき。

ファルハディの作品は小学校の時に見た“道徳”の授業のVTRみたいで。

このような場合、あなたならどうする、あなたはどう考える、と。

今作も それを試されてるようで。

あえて言うとするならば、胸がいたい…
主人公の行動にドン引き!倫理観を問われるストーリーは『プリズナーズ』を彷彿させるけど、エンタメ性は低し。夫婦のすれ違いを浮き彫りにする、巧みな心理描写に引き込まれた。ドゥニ・ヴィルヌーヴか黒沢清がリメイクしてくれると嬉しい。
心に冷たい小石を投げ入れられた感覚で、劇場を後にしました。

やはりオートロック付いてないとな🤔
超名作『別離』のアスガー・ファルハディ監督の最新作ということでクリアファイル付きの前売り券を買って楽しみにしていました。

冒頭のマンションが崩れかけて逃げるワンカットで見せるシーンは圧巻!
そのあとはこの監督らしい怪しげな雰囲気で話が進んでいきます。
そしていつものように答えを観客に委ねる終わり方はさすがです。
幸せを解決しようとしてドンドン泥沼に…音楽も一切ないのに雑踏音で盛り上げていく…。

今作でアカデミー賞を受賞したが監督はトランプ政権に反抗して受賞式には出ませんでした。
彼なりの反骨精神はこれからも作品の中に散りばめられていくことでしょう。
mpc

mpcの感想・評価

3.6
イランが舞台のドキュメンタリー風サスペンス

夫の留守中に妻が暴行されてしまう
警察に通報したくないと嘆く妻の為に夫は独自に犯人探しをするが、、

舞台劇セールスマンの死とリンクして進んでいくストーリーがなかなか面白い

ストーリーよりも、イランのアパート、崩れるはヒビだらけだしコンセントが焼けるは散々だなこりゃ、、
家事がメインのイラン女性にとっては辛いね


Bunkamuraシネマはお初。
新宿や銀座の映画館では見かけない客層で少しカルチャーショック
舞台劇を観に来たような正装ファッションのシニアの方々が多かったです。

一階のアートSHOPでピアスやら御菓子やら買って金使いすぎた私は馬鹿だねえ
想像以上に面白かった!
ミステリーだと思ってたけど…
劇中の舞台がなんともまあよく夫婦を物語ってた
この終わり方好き
茶一郎

茶一郎の感想・評価

4.3
結局、夫エマッドと妻ラナが夫婦、また家庭の居場所である「家」を一時も得ることはありませんでした。
 映画『セールスマン』は鉄のパイプが組まれて造られた劇中劇『セールスマンの死』における「家」が作られていく過程を映しながら、テヘランの著しい建設ラッシュによりエマッド-ラナ夫妻の住む「家」にヒビが入る事故から物語が始まります。客席から見ると「家」に見えるが、舞台役者であるエマッドやラナから見ると鉄パイプが剥き出しになっているニセモノの「家」、そして物語の最初からヒビの入っている「家」、これら二つは最初から夫婦の間に亀裂が生じていることを観客に予期させます。実際、この後、エマッドとラナ夫妻の間に生じているそのヒビは、ある事件によってどんどんと大きくなっていきました。
 
 【粗筋】建設工事によりアパートを追い出されたエマッドとラナ。彼らは地元の小さな劇団に所属し、上映間近の『セールスマンの死』に向けて稽古に励んでいました。仕方なく、友人に紹介されたアパートに引っ越すことにしたエマッド-ラナ夫妻、しかし、『セールスマンの死』初日の夜、悲惨な事件が先にアパートに帰ったラナを襲い、次第に夫婦の関係は悪化していきます。

 【監督】ベルリン・カンヌ国際映画祭で評価される傍ら、今作『セールスマン』で二度目のアカデミー外国語賞を受賞したアスガー・ファハルディ監督は、もはや説明不要、映画人を唸らせ、一般の観客を楽しませる今、最も精密・崇高な大人向けエンターティメントを作る作家と言っても過言では無いと思います。
 2017年のアカデミー賞の際、イランを含めた7ヶ国の国民の入国を禁止したトランプ大統領に対抗し、アカデミー賞授賞式をボイコットしたファルハディ監督。今作のアカデミー外国語章受賞は、その監督の行動を受けの受賞、いわば「同情受賞」などと言われましたが、そんな下品な言葉は吹き飛ぶほど『セールスマン』は群を抜いて面白い作品でした。

 ファルハディ作品は常に、人間の信仰-それはイスラム社会における宗教であり、最も近しい「他人」である家族や友人への信頼-が揺らぐことから来るミステリー、もしくは人間コワイ映画を描き続けています。
 一般的に「イラン映画」と聞いて真っ先に思い浮かぶアッバス・キアロスラミ監督やマジッド・マジディ監督の映画世界「貧しい市井の人々、子どもたちの世界」というより、ファルハディ作品世界は「豊か・お金に困っていない大人の世界」イランの中流階級を描きます。尤も、ファルハディ作品の登場人物が中流階級以上で社会的地位があるからこそ、中々、他人に助けを求められない・警察に通報できない今作の夫婦のように彼らは世間体や他人の噂に苦しむのです。
 
 そして何よりファルハディ作品において重要なのは、ファルハディ監督が「登場人物の間に疑念・不信感が湧くこと」にしか興味がないという点です。これは監督の作品が精密すぎる点をヒッチコック作品と重ねるように語ると、ファルハディ作品において「嘘の真実」や「事件の実態」は、ヒッチコックの『バルカン超特急』における機密情報のようにマクガフィンに過ぎません。『別離』で娘の答えを見せないのも、『ある過去の行方』でメールを見せないのも、今作『セールスマン』で事件の全貌を見せないのも、全てファルハディ作品におけるマクガフィンだからなのだと思います。

 さて、この『セールスマン』の到達する地点も、『別離』や『ある過去の行方』のような夫婦・人間コワイ臨界点です。被害者は加害者になり、加害者は被害者になる。そのドアを閉めるともう後には戻れない、待っているのは夫婦の「断絶」。彼らは、二人で共演している演劇の中でしか夫婦を演じることができないのです。