セールスマンの作品情報・感想・評価 - 86ページ目

「セールスマン」に投稿された感想・評価

ネガティヴな意味ではなく、なかなか後味の悪い映画でした。
じゃあ一体どうすれば良かったの?と鑑賞後も考えさせられる作品ですね。
「別離」「ある過去の行方」のアスガー・ファルハディ監督の最新作。とある夫婦が巻き込まれた悲劇を叙情的に描いたミステリードラマです。

主人公の学校教師・エマッドとその妻・ラナ。共に小さな劇団に所属し、公演予定の舞台「セールスマンの死」の稽古に勤しんでいた。
しかしそんな2人を、突如災難が見舞う。住んでいた家を事故で失い、その後引っ越した先でラナが侵入者に襲われたのだ。
恐怖と苦痛から忘却を望むラナと、苛立ちを募らせ報復を求めるエマッド。徐々に気持ちがすれ違っていく中、ついにエマッドは犯人への糸口を見つけるが…というストーリー。

すれ違っていく2人が辿り着いた結末のあまりの苦さがとにかく印象的でした。観終わった後も、心の中に強くシコリを残していくような作品だったと思います。

もし元住んでいた家を失わなければ?
もっと引っ越し先を吟味していたら?
事件の夜インターホンをしっかり確認していたら…?
事件の捜査を警察に任せていたら?

些細なことが積み重って、事態は悪い方向に向かってしまいます。
事件を忘れて静かに暮らしたいと願うラナの気持ちも、激昂し犯人を見つけ出そうとするエマッドの気持ちも各々正しい。それなのに、2人の気持ちは少しずつすれ違い、不穏な空気が流れ始めます。わずかな感情の機微、空気感の表現が本当に上手いです。

そしてクライマックス。ここでも運命の悪戯が、2人の関係、事件の展開に決定的な影響を与えてしまうのです。
結局どうしようもなかったのでしょうか?答えがわかりません。

ただ少なくとも、最後の出来事があったとしても犯罪は犯罪であり、事件の最大の元凶は犯人がラナを襲ったことにあると思います。
そんな事件はそもそも起こさせてはならないし、起きてしまったとしても、被害者が声を上げられず犯罪者が野放しにされるような社会ではいけない。
警察が本当に正しく機能し、被害者の気持ち・プライバシーも配慮され、二次被害なく確実に事件が解決されることが、本来あるべき形だったように感じます。
ただ結局そうではない現実の中、エマッドとラナはどうすれば良かったのか。とても複雑な気持ちになりました。

総じて、緻密で丁寧な描写と設定、役者陣の真に迫る演技など、非常にリアルで見応えのある映画だったと思います。

一方で、地味な内容であることもまた確かです。派手なアクションや大事件が起きるわけではなく、淡々と静かに感情に訴えかけてくる作品です。
ファルハディ監督らしい。相変わらず派手なことはしてないのに、徐々に胃がキリキリしてくるというか真綿で首を絞められるような息苦しさを味わえる映画…。凄い好きなスタイルですけどw

ある事件をキッカケに壊れていく家族の物語。相変わらず抑制の効いた演出がたまらない。

劇中劇として挿入されるアーサー・ミラーの戯曲が分かればもう少し突っ込んだことも考えられるのかな。

そういえばファルハディ監督の作品、彼女が消えた浜辺〜別離〜ある過去の行方、そして今作、ほぼ全て(浜辺はちょっと違うけど)夫婦の揉め事を描いててそれがすごいサスペンスと緊張を生み出しているのでこの監督の結婚観とか気になるw
Tiara

Tiaraの感想・評価

5.0
また今回も吸引力が強め
警察に頼らない犯人探し
疲弊しながら妻を気遣う夫に
一番共感持てる
犯人の妙な遺留品は繋がるが
責められない状況変化が巧妙
葛藤が根深く残る
gutchs

gutchsの感想・評価

4.0
「サスペンス」=「ある状況に対して不安や緊張を抱いた不安定な心理、またそのような心理状態が続く様を描いた作品をいう。」となってました。(wikipedia)
この映画は、まさにサスペンス。
誰が犯人か?に重きはなく、終盤の 不安と緊張感は、凄かった。
前席の ひたすらモゾモゾ動くおじさんも、微動だにしなくなりました。
行動が過激になってゆく 良き教師のはずの主人公。その行為の是非はわかりませんが、妻ではなく自分のためにやってるように感じました。
日本と違う、イスラム社会のことが随所にみられ、いろいろ考えさせられました。
観終わった直後:
世間体とか恥とか名誉とかをを気にするイラン人基質の主人公たちに苛立ち不快感を覚えた。

落ち着いたあと:
この不快感こそファルハディ監督の狙い通り、イラン社会問題の指摘になってるんじゃないかと気づき、尚更ムカついた。

同監督の前3作を振り返って:
『彼女の消えた浜辺』
詩的で印象的だった。名前も素性も知らない人が、身内の集まりに参加してくることってよくあるよね…ってしみじみした。イランにもよくあるし、きっと他の国にもよくある。

『別離』
これは痺れた!最後のシーン、娘が離婚する両親のどちらに付いていくか、結論を出す前に映画が終わるのが痺れた。これも、イランの一家族を通じて全世界の社会問題の1シーンを描いたような、小さな舞台だけど壮大な作品。

『ある過去の行方』
複数人の視点から描かれた、フランスを舞台にした映画だった。「イラン社会問題を描く監督」というレッテルから抜け出し飛び出した作品だったと思う。

そして今作『セールスマン』
ファルハディ監督はスペインで映画を撮ろうとしていて、でもキャストが揃うまで思ったより時間がかかる(1年くらい)から、その間にイランで本作を撮ったらしい。その程度の軽さの作品、ていうのが正直な感想。
後半は視点が変わっていつの間にか犯人に同情し、妻のためと思って行動している夫が憎たらしくなった。
ファルハディ監督の作品すべてに通じるものだけど、一歩先がまったく見えず、視線や自然な台詞のみで全体像が浮かび上がるまで強烈な緊張感が張り詰めている。そして、ほんの少しのきっかけで起こる取り返しのつかないこと、心の行き違い、カタルシスを許さない罪と赦しの物語展開。またしても圧倒されました。
多分、劇中劇の「セールスマンの死」を知ってるほうが良いんだろうな…。
視野が狭まっていって、どこに向かっても出口に辿り着けない感じ。すごく嫌なムードを保ちながら終わりまで引っ張っていく。
どうしても分からなかったのは、劇を演じてるとき舞台に大きな顔が投影される演出。
実際の「セールスマンの死」がそういう演出なのか?それとも今作オリジナルて意味がある演出?
いろんな人の感想を覗き見して学ばせてもらいやす。おわり
倒壊しかけたマンションから住人が緊急避難する長回しからはじまる。そのカットの最後に映った窓ガラスにピキピキとひびが入り、その後もそのひび割れたままの窓ガラスが象徴的に登場する。
興味を持続させる謎解きの部分が今も日本で話題になっている性被害と法の問題になっていることが、観る側の葛藤を誘う。
つまりこちらとしては夫同様、何があったか知りたいし、犯人も知りたい。
ただそのためには妻に話してもらわねばならない。警察にも行ってもらいたい。
だから性被害の内包する問題そのものが作品の吸引力になっている。
しかも真相がわかってもすっきりしないのがファルバディ作品。近いカメラで人物を捉え、ずっとせまいスペースに押し込められるような感覚。後半、セールスマンが字義通りに暗室に押し込められるのも意図的な演出かも?
単純なサスペンスではなく、ちゃんと文化や社会のあり様をからめてくれるのが本当におもしろいし、たまらない。
osowa

osowaの感想・評価

3.0
見終わったときは何に共感していいのか全く分からなかった。
男の身勝手さに反感を持ったり。
でも、皆さんのレビューを読んでそういう作品なのかと理解した。
私のように背景知識が無いのが見ても作品の良さが分からないんだなぁ。