セールスマンの作品情報・感想・評価 - 87ページ目

「セールスマン」に投稿された感想・評価

倒壊しかけたマンションから住人が緊急避難する長回しからはじまる。そのカットの最後に映った窓ガラスにピキピキとひびが入り、その後もそのひび割れたままの窓ガラスが象徴的に登場する。
興味を持続させる謎解きの部分が今も日本で話題になっている性被害と法の問題になっていることが、観る側の葛藤を誘う。
つまりこちらとしては夫同様、何があったか知りたいし、犯人も知りたい。
ただそのためには妻に話してもらわねばならない。警察にも行ってもらいたい。
だから性被害の内包する問題そのものが作品の吸引力になっている。
しかも真相がわかってもすっきりしないのがファルバディ作品。近いカメラで人物を捉え、ずっとせまいスペースに押し込められるような感覚。後半、セールスマンが字義通りに暗室に押し込められるのも意図的な演出かも?
単純なサスペンスではなく、ちゃんと文化や社会のあり様をからめてくれるのが本当におもしろいし、たまらない。
osowa

osowaの感想・評価

3.0
見終わったときは何に共感していいのか全く分からなかった。
男の身勝手さに反感を持ったり。
でも、皆さんのレビューを読んでそういう作品なのかと理解した。
私のように背景知識が無いのが見ても作品の良さが分からないんだなぁ。
akekokko

akekokkoの感想・評価

3.5
慌ただしい幕開けと共に、前半暫く続くごく平凡なある家庭の日常。
それがある侵入者によって見事に打ち砕かれてしまうという。。
なぜ、ここまで事細かに普通の日常を引っ張るのだろうかって、少し退屈でもありましたが、それは後半一気に訪れるシーンでのショッキングさを強調する為のものだったのかもしれません。
この監督の作品が好きで今回も訪れた訳ですが、やはり人間の感情を上手く捉えているなぁと思いました。
観終わった後は決して気持ちの良いものでは無いけれど、心にぐっと残る作品でした。
TOSHI

TOSHIの感想・評価

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オープニングが、印象的だ。アパートが強引な工事によって倒壊の危機に晒され、主人公の夫婦を含む住人達が、慌てて飛び出す。経済成長による乱開発が進むテヘランの現状を表すと共に、仲睦ましい夫婦にこれから生じる亀裂を暗示していると言えるだろう。突然のアパート取り壊しの決定で、強制退去される事になった夫婦は、別のアパートに移り住むが、以前の住民の荷物が残っていて、不穏な空気が漂う。
エマッド(シャハブ・ホセイニ)は高校で文学の教師をする一方、妻ラナ(タラネ・アリシゥスティ)と共に小さな劇団で、俳優として活動しており、上映予定のアーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」の準備に追われている。イランでアメリカの演劇作品を上演するのは、リスクのある事らしく、イランの中産階級ではあるが、リスクを伴う芸術活動をしているという意味で、典型的とは言えない夫婦の設定が巧妙だ(セールスマンの死は、アメリカの変化によるある社会階級の崩壊を描いた作品であり、イランの現状にも重なる)。
そんな夫婦に事件が起こる。エマッドの留守中、浴室にいたラナが謎の闖入者に襲われたのだ(直接言及されないが、レイプの可能性が示唆されている)。アスガー・ファルハディ監督の過去の作品「彼女が消えた浜辺」や「別離」と同様、事件の瞬間の描写を省略し(映画はある意味、省略の芸術である)、観客の想像力を刺激しつつ、その後の展開に引き込んでいく演出に唸る。
近隣住民達の話から、以前の部屋の住人は娼婦で、多数の男性が出入りしていた事が分かり、その男性達の一人が犯人ではないかという憶測が浮かび上がる。直ぐに警察に通報しない事に驚くが、男尊女卑が激しくレイプされると女性も罪に問われる、イランならでは社会的な背景がある(前半に、タクシーでエマッドは何もしていないのに、隣の女性から触らないでと言われ、それが過去のレイプ経験のトラウマから、男性嫌いになった人だと分かるエピソードが効果的に使われている)。
事件が警察沙汰になるのを頑なに避ける(自身が逮捕され、演劇の公演ができなくなるのを避ける意味もある)ラナに対して、痺れを切らしたエマッドは復讐心から、独自に犯人捜しを始めるが、二人それぞれの、性格の予期せぬ側面が露呈し始める。
部屋に残されていたキーから、放置されていた車を特定し、辿り着く意外な犯人像。そして終盤、犯人と対峙した夫婦それぞれの行動は、人間の本性が抉り出されるようで、胸を締め付けられた。ファルハディ監督の、複雑で緻密な脚本と繊細な心理描写、リアル過ぎる状況を作り出す演出力に感嘆した。
1990年代のイラン映画ブームで描かれたイランは、荒涼とした大地を子供達が駆け抜けるといった、いかにも先進国からイメージする発展途上国の姿だったが、それを覆したのがファルハディ監督の、「彼女が消えた浜辺」(2009年)だった。高級車に乗り、携帯電話を使いこなし、バカンスを楽しむ登場人物達に驚いたが、本作でもそういった経済的な発展・洗練が描かれる一方、イスラム教の戒律に縛られる社会の閉鎖性が残存し、人々の心を抑圧している事が見事に浮き彫りにされていた。

トランプ大統領によるイスラム圏7カ国の入国禁止措置、そしてアリシゥスティやファルハディ監督のアカデミー賞授賞式のボイコットで、イラン映画や本作にもネガティブなイメージが降り懸かったが、本作の外国語映画賞受賞は、政治による世界の分断を許さない、芸術に持ち込ませないとするアメリカの映画人の意識が、結集した結果なのかも知れない。
桑畑

桑畑の感想・評価

4.0
あまり馴染みないイランの映画だったが普遍的テーマの映画なので全く問題無く楽しめた。重く辛く煮え切らないのに大傑作。ある意味残酷な夫婦愛、男性こそ観るべき映画なのかも。アスガー・ファルハディすげえ

このレビューはネタバレを含みます

長いと思ってしまった。
嫁、怖がるの分かるけどさ、怖がりシーン長いと思ってしまった。
最後あたりの嫁の言動が理解できない。被害者なのに??ん?
なんで許しちゃうん?

んで、そのやりとり直後、おじいちゃん倒れて。
裏の裏がありそうに思わせてシンプルに犯人はおじいちゃんだった。んー・・ただ後味悪いだけの映画だった。
確かにじいちゃんが犯人は予測できんけどさ、真犯人いるんじゃないかって思わせた期待させたのに、犯人はおじいちゃんて笑。
暗い映画の途中、教師の生徒のやりとりで笑ったけど、
映画館がしーんとしてたのは、
暗い映画プラス教師が精神的に不安定で笑いどころなのか?と笑っていいのかと思わせたからだろー笑
CCC

CCCの感想・評価

3.8
さすが。すんなりとは終わらないし、世相も表している。ふとした言葉の掛け違いなどから、物語が前に進む。落語のようなのは、これまでの作品と同じ。

でも好みとしては、前作、前々作のほう。
83roh

83rohの感想・評価

3.0

このレビューはネタバレを含みます

アスガー・ファルハディ監督作品です。監督で見る映画を決めたりしない人なんですが、何故かこの監督の作品は「彼女が消えた浜辺」、「別離」と3本目です。なんか気になる作品を撮ってくれますよね!?

ヒロインのタラネ・アリシュスティは、なかなか美人さんなんです〜♪事件が起きてからのラナ(タラネ・アリシュスティ)は、触ると壊れてしまいそうな精神状態に陥ってます。ガラス細工のような繊細なラナを上手く演じてたと思います。

イラン🇮🇷が舞台になってます。知らなかったイランの日常がさりげなく描かれていてなかなか興味深いです。イランってタクシー🚖相乗りなんですか?「セールスマンの死」ってアメリカ🇺🇸の初演は1949年、今から68年前の戯曲を上映する時、未だに検閲されるんですか?売春って世界で最古の商売と言われてるけど、イランでもあるんですね!?

もっとも衝撃的なのが、傷害事件が発生してるのに、警察👮🏻‍♀️に届けない事。劇中の誰かが「ラナの全てが明らかにされ、悪人にされる可能性がある…」というヤツ!被害者が女性の場合、よくある事のような、日常茶飯事のように語られる。事件に対する考え方が、日本とは相当違う。ココを理解しないと楽しめないのかな?

映画は独特の緊張感がスクリーンを支配し、集中して見ていられた。でも、謎があるんだよな…犯人はあの人でいいの?初めは否定してたよね?前の住人とあの人は娼婦と客の関係だったの?エマッド(シャハブ・ホセイニ)が渡したビニール袋を受け取った時の娘婿の反応ななんだったの?犯人探しなんか、結局虚しいモノだという事なのでしょうか…

僕レベルの理解力では真相は判りませんでした😩
圧倒的。愛情と憎悪との複雑極まりないタペストリーが恐ろしく奇妙な、悪夢のようなドラマを醸成していく。脚本や俳優の演技も驚異的だが、映像の面でファルハーディーの最高到達点を記録しており、『セールスマンの死』をモティーフとした点もパーフェクトだ。鑑賞中はファルハーディーが映画作家として、物語作家としていかにパワフルかを思い知らされるばかりだった。近代化していく過程でイランが抱え込んだ屈折した矛盾を様々な表現法でドラマに織り込んで見せる『セールスマン』は同様のテーマの『彼女の消えた浜辺』、『別離』と共に三部作として鑑賞されるべき。

それにしても、ケン・ローチやダルデンヌ兄弟、ケネス・ロナーガン、パナヒ、そしてファルハーディーと、 2017 年、続々と日本で公開される硬派な映画作家たちの作品には圧倒されるばかり。おもしろい年になりそう(あとは日本の映画がおもしろければ……。黒沢清の新作に半信半疑の期待感を抱きつつ)。
mito

mitoの感想・評価

3.9
今年度アカデミー外国語映画賞も獲得した。ファルハディ監督最新作。

戯曲「セールスマンの死」に出演している役者の夫婦は住んでいるマンションが倒壊の危機に晒され、引っ越しを余儀なくされる。
新たな居住地は先住者の荷物が残っており、円満に引継ぎが出来ていない状態だった。
ある夜、妻がシャワーを浴びている途中、何者かに襲われてしまう。

夫は犯人探しを始め、次第に先住の女性や関係者の関係から真実が見えてくる…。

相変わらず、ファルハディ監督はイヤらしい作品を作るね(笑)
この正しい事をしている筈なのに、悪ものになってる感じとか、登場人物のヤケに生々しい煮え切らない態度の連続とか…。

「別離」の時もそうだったけど、テーマや話の支柱は結構王道なのに、それをファルハディ監督が手掛けるとすげー面倒臭い人間ドラマになる。
褒めてます。

だから、結構な頻度で登場人物にイラッとするんだよね。
あと、終盤の悪い方向に流れ過ぎちゃって観てる側も笑うしかなくなっちゃうのも相変わらず。

もうラスト10分くらい、ずっと「ひぇー」とか言いながらニヤニヤしてた。

やっぱりこの監督の映画は面白い。