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ギミー・デンジャーのNONAMEのレビュー・感想・評価

ギミー・デンジャー(2016年製作の映画)
3.8
ジム・ジャームッシュという人はいったい何だったのだろうか……と 普段は考えもしないことについて考えてみる。新作『パターソン』も公開されたことだし。そういうおめでたいことでもないと とてもじゃないけどジャームッシュの話題なんて日常で出てきやしない…………いやいや そんなことないか。
いや やっぱりそうかも……。
20代前半で見た『ストレンジャー・ザン・パラダイス』は それはそれは衝撃的な映画だった。彼の長編映画第1作のこの作品を偶然でも見ることができたのは 幸福な経験であったと言えるかもしれない。
主人公のウィリー役の顔の長い兄ちゃんがフェイクジャズの番長バンド ラウンジ・リザーズのジョン・ルーリーだと知ったのは数年後のことだった……。まあ 物語は ひたすらアクションもスペクタクルも無縁で 地味な白黒の映像。主人公はほとんど3人の若者のみ。音楽は弦楽四重奏。気持ちの良い脱力感があるだけ。
だが ワンシーン・ワンカットに 奇妙なおかしさと そこはかとない悲しみが描き出され まさにこれジャームッシュの原点とも言える作品だった。それは次作『ダウン・バイ・ロー』(こちらもジョン・ルーリー そしてトム・ウェイツ!)も ほぼ同じ。
あれから何年経ったであろうか。公開からは30年位経ったらしい。そして00年代以降は しばらくはつまらない作品ばかりを撮っていたように思う。とにかく 『ブロークン ・フラワーズ』だとか『リミッツ・オブ・コントロール』といった作品は虫酸が走るほど嫌いだ。『ブロークン・フラワーズ』を見るくらいなら ガイ・リッチーの『スナッチ』でも見たほうがマシだ。だが『デッドマン』〜『ゴースト・ドッグ』(最高です)ぐらいの流れは素晴らしいし ニール・ヤングのファンなら涙なくして見られない『イヤー・オブ・ザ・ホース』で もう絶頂である。さてこれから(良い意味で賞などというものとは無縁な存在として)どのような作品を というタイミングで今度の新作である『ギミー・デンジャー』の登場である。兎にも角にもイギーである。アレックス・コックスもダニー・ボイルもイギーだし ジャームッシュとイギーの関係はもはや説明するまでもないだろう。
イギー・ポップの長髪と革ジャンスタイルには何か学ぶべきことがあるように思う。これはいやがうえにも期待が高まってしまうのも無理はない。
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