てんあお

エグジールのてんあおのレビュー・感想・評価

エグジール(2016年製作の映画)
3.6
以下、思ったことのメモぐらいのコメント。

幻想的でユニーク。『中国女』以前で止まってしまったかのような、流刑者の独白。皿や箱の底面にまで 映し出される(時代の証言となる)フィルム映像と、さまざまに入れ替わる「舞台装置」の数々。(本作で一番のポイントと言っていい)食べてきたものの変遷で表現するカンボジア「人民」の苦難と、革命についての記憶。

記憶をかたる目の前の男は、もう既にこの世の人ではなく、辛らみと存念を、忘れ去られることを恐れる亡霊なのだろう(だからといって、昨今の流行りのように、ホラー・怪奇映画のレッテル貼りをするつもりもないが)。

… とはいえ、眠気との闘い。

これは歴史の講義なのか、キュレーターなしの美術品 鑑賞なのか。

それぞれのオブジェクト、映像の意味するところが掴めないと意志疎通が成り立たない箇所も散見される。よくいえば「キューブリック的」とも言えなくもないが、それでは少しスポイルが過ぎるかもしれない。正直、他国の歴史に疎い島国の人間に差し出すには、お互いにではあるが、理解捕捉の歩み寄りが必要だと思われる。クメール・ルージュ、カンプチアからカンボジアへ至る経緯、内戦を巡る時系列と、照らし合わせるだけでも一苦労。

結局、同胞の亡骸に群がっていたであろう、蝸牛を口にしなければならない悲惨も、どこか頭のなかを上滑りしていく。あれが一番わかりやすいけれど。たとえば『ピストルオペラ』の 老女 りん が語る、浜に打ち上げられた鯨に群がるフナムシの記憶ほど、インパクトのある表現だったのか、とかんがえればそうではなかった。詩的、というのも扱いが難しい。
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