このレビューはネタバレを含みます
面白い箇所がほぼありませんでした。
キャラ造形にも、部屋の内装にも特徴がなく、
作画や演出にも、目を引くような魅力はありません。彼女が志望している職種、学校で専攻している分野など、具体的な個性にも触れられることがありません。
猫は、彼女が好きだとか彼女を励ましたいなどと、飼い主からして都合のいいキャラでしかなく、興味深い自我はないようです。捨て猫になった経緯すら、忘れたし興味ない、といった具合です。
猫の心の声のナレーションも、平易なワードが並ぶばかりで想像が広がりません。「…背筋を伸ばし、彼女は朝の光の中へと歩き出す。」など、画面に映っていることをそのまんま言っているだけのことすらあり、基本的に観る人の想像力が働くことを阻止しているようでした。
対して、自主制作版の『彼女と彼女の猫』の方には魅力がありました。
そもそも、表現のコンセプトが全く違うように思われます。
結論だけ言うと、あちらは、ストーリーの中心である彼女そのものは見せず、彼女の部屋など周辺を描くことで、彼女に対しての関心をそそる物になっていました。
つまりは、あえて情報を隠したり、絞ることで、キャラクターへの興味が湧いて楽しい、という趣旨の作品だったと思います。
猫の目線のナレーション自体も、彼女の周辺に位置するものだといえるので、猫目線であることの意味も異なっていると言えます。
今作は、より普遍性を高めて共感を得るために、特徴のないキャラクターをデザインしたのかもしれません。自主制作版にあった、想像する楽しみ的なものは無くし、中身のない世間話のような、ぬるいトーンを狙っているのでしょうか。
個人的には得るものがなさすぎて不満でしたが、こういう作品が好きな人もいるのかもしれないと思うと、そんな需要には合っているのでしょう。