きぬきぬ

運命のつくりかたのきぬきぬのレビュー・感想・評価

運命のつくりかた(2003年製作の映画)
5.0
これ、すべては映画監督ボリス(アマルリック)の創作の産物に過ぎないって観方の可能性もありますよね、って監督に問いかけたら、映画ってそもそも虚構でしょ、って返されそう!(笑)

ボリスの製作した企業PR映像から、彼はその会社の管理職マリリンと出逢い、鹿を見て(笑)ボリスに運命的に惹かれたマリリンがボリスを誘うパーティでは、彼女は赤いドレスで闘牛の様に刺激的で攻撃的に彼を誘う!(BGMは組曲カルメン!)そんなマリリンを柔軟に受け止めるボリスもまたミュージカル!そんな二人の愛は、三部めのピレネー山での場面にまで巡って行く!

映画監督を目指していた青年が、仕事先のキャリアウーマンと恋に堕ち、子どもが生まれ、彼女に囲われる主夫みたいな存在なり、擦れ違いと人生へのジレンマから別れを決意したら、彼女の方が愛と自由を求めて同性の恋人と逃避行!!残された男は置いてけぼりくらった二人の子どもと新たな人生を歩む為ピレネー山のガイドとなる!愛し合っていたはずなのに、自分自身でいる時間も必要。男は自分の生き方を見直す為に山に籠ったようなもの。しかし人生波乱に満ちているな~。
5年毎に区切られた三部の10年の歳月が、日常の中に意外性を込め展開されるけれど、ほんと、どの場面もユーモアがあり印象的でとても素敵過ぎる!
優しい男に甘え過ぎ身勝手になった女は、ピレネー山に来て、何処に幸せがあったのかを悟る。絶滅危惧種の鳥たちの交尾でさえ、初めての愛の場面を思い起こさせるようだし、山男になったボリスでさえ装っていた冷静さが崩れたり。
最初にマリリンが、男と女が重なり合う映像手法を何と言うのかボリスに訊ねたように、オーバーラップされる場面に示される結末。
些細で繊細に言葉や映像や音楽が繋がって行く素晴らしさ!
これはボリスが撮った映画でないの??!!!

ああああ、マチュー・アマルリックのなんて素敵な色男ぶり!!

原題は‘ひとりの男、それも本物の’的に訳すらしい。
監督から聞かれた方によると、最初のタイトルは「とっても女性的な男の子」だったそうで、
ボリスに柔和さを感じたことは間違いでないのだと思った。自分の欲望を優先する女性たちに比べ、ボリスは色男だけど一歩退いてしまう。海に飛び込み、山が、自然が彼を男にしたのだろうけど、それでも彼は柔和なんだなあ。
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