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ブンミおじさんの森のコマミーのレビュー・感想・評価

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)
4.0
【あらゆる魂たちが見守っている】


※今年公開の作品として組み込みます。



千葉県柏市にあるキネマ旬報シアターさんにて、「MEMORIAメモリア」と一緒に上映開始となった"アピチャッポン"監督の代表作の一つ「ブンミおじさんの森」。今ではレンタルビデオ店でも入手困難となってしまったアピチャッポン監督の作品を、スクリーンで体験できる機会は早々訪れないので、それを噛み締めながら鑑賞したのだが、本作は私にとって大事な作品となった。

腎臓の病に冒され"余命僅か"となった"ブンミおじさん"は、今は亡き妻の妹"ジェン"を農園に呼び寄せる。すると、亡き妻の"霊"が現れたり、行方不明の"息子"が姿を変えて現れたりと次々とスピリチュアルな体験をする。
やがて、2人と共にブンミと家族は闇の中"森"へと入ってゆく……。

私は本作は「もののけ姫」の世界観とよく似ていると感じた。自然界と魂たちに見守られながら生涯を閉じようとするブンミの姿は、とても哀愁を感じさせた。そして、霊や精霊たちの姿もとても神秘的で、人間ドラマとしての様相を纏いながらも、"ファンタジー作品"としての様相を強くさせていた。
こんな不思議な体験をさせてくれるのも、アピチャッポン監督の成せる技なのだと感じた。
そしてこの"映像美"。タイと言えば"洞窟"が多い国で有名だが、その甲斐もあってかやはり洞窟の映し方がとても美しい。目の保養となっていつまでも観ていたい。

恐らく、これからも入手が困難となっていくアピチャッポンの作品。それを劇場で観れる機会を逃すまいと、本作も劇場できて良かったと心から感じた体験であった。自然界に囲まれたタイならではの映画体験であり、それを世界に発信しているのがアピチャッポン・ウィーラセタクンと言う男なのだ。

ある意味、難しい知識や言葉は無用。映像を通して"言葉では無い何か"で、美しさを伝えるのが彼なのです。
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