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ブンミおじさんの森のエディのレビュー・感想・評価

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)
3.1
死期が近い主人公と亡くなった妻との交流など、「あちらの世界」に住むものや精霊たちと人間との交流を描いたファンタジー。ティムバートンが絶賛しカンヌでパルムドールを取った本作は、精霊と現世の人の係わり合いなどの世界観は八百万の神を信じる日本人なら共感できる。しかし、肝心のストーリーが夢の断片みたいにわかりにくく、パンフやWEB情報などを見ないと何が言いたいのか判らなかったのが残念。

タイ東北部の村に住むブンミは重い腎臓病で腎臓透析を受けており自身の死期が近いことを理解している。なので、19年前に亡くなった妻フエイの妹ジェンやその息子トンを呼び寄せるが、彼らとの夕食中に亡くなった妻フエイが現れるほか、数年前から行方不明になっている息子ブンソンも出てきた。
あちらの世界に行った筈の彼らと過ごすうちに、自身の死がいよいよ迫ってきたので、ブンミはフエイ、ジェンたちと森の洞窟に入っていく。。。

夜の森に入ったことがある人なら判ると思うけど、濃厚な森の吐息にむせそうになってくる。そして、ねっとりした空気がまるで異界の境界のように肌にまとわりついてくる。その異界の先には何かがいるという感じが強くするのでとても怖いのだ。この映画はそんな森の空気を良く表現している。
また、死んだ祖先や身内との距離感の近さ、お寺にお供えをしたら祖先が届いたってお礼を言ってくれるなんていう表現は僕ら日本人の感覚にビンビン来るし、旦那の病気が心配で出てきたんだよというフエイの台詞も涙が出るくらいに共感できる。
ただ、天国は何も無いところで、死者はそこにはいない。幽霊は物に執着しないで、生きているものに執着するので、身近な人の側にいるというのは霊と仏様とがごっちゃになっていて、個人的にはどうかと思ったが、同じアジアなので死生観や精神世界はすごく共感できる。

しかし、肝心のストーリーが非常に判り難いのだ。冒頭の牛のシーンや、王女が滝でなまずとセックスするシーンは何度見ても判らなかったので、ネットで検索したら「これはブンミおじさんの前世を描いたとパンフに書いてある」と出てきたのでびっくり。そんなのは観ていても絶対に判らないと思う。唐突で、前後の流れを完全に遮断してしまっているからだ。

また、息子ブンソンブンソンはいろいろ事情があってSWのチューバッカのようになってしまったのだが、なんでそうなったのかというのも彼がそうしたのも理解できなかった。
極めつけはラストシーンで、ブンミの死がクライマックスだと思っていたら、なんだか判らないシーンで終ってしまう。トンのシーンは何が言いたいのだろう?

抑揚に乏しく全体に非常にまったりとした流れの映画なので、途中中だるみを感じることもあるし、洞窟のシーンはあまりにも冗長なのでイラついた。

映像は美しいし、描かれている精神世界観も日本人としては理解できるのだが、肝心のストーリーがわかりにくい上にあまりんもスローテンポなので、自分にはいまいち合わなかった。
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