ちろる

ブンミおじさんの森のちろるのレビュー・感想・評価

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)
4.0
静謐で美しい自然に囲まれたブンミおじさんの生活の中に突然現れる亡くなった妻の亡霊、猿の精霊・・・
と、想像していたよりもかなり奇想天外なお話だったのにもかかわらず、これを滑稽だと感じる自分がおかしいのではないかと感じてしまうほどにブンミおじさんとその周りの人間は彼らの存在を淡々と受け入れる。

恐らくブンミおじさんの住む村に囲まれた村だけは、時間も自然の摂理からも逸脱した不思議な異次元の入り口に囲まれていて、死と生の境界線がとても曖昧なのだろう。
1つの観念に縛られることのない登場人物たちの姿勢を見ているだけでなんだか心地よくて、人間、動物、精霊の境界線を引いてた自分がとても恥ずかしくなる。
少しスピリチュアル的な話になってしまうけれど、生の世界も死の世界も精霊も、動物たちもそれぞれの時間を共有しているのだろうと何となく思うからこういう風に映像化されて見せられると私は妙に納得してしまう。
カンヌ映画祭パルムドール最高賞を受賞した本作、カンヌはこういう類のおはなしが好きだと思うのだけど、自然崇拝の神道が元となる日本も割とこの感覚に近いから腑に落ちる人も多いのではないだろうか。

好き嫌いは恐らくはっきりと分かれてしまうかもしれないけれど、
緑色に染まった薄暗い森の生活と、突然寓話のように描かれるナマズと王女の滝壺のシーンなどは必見。
タイの観光地とは全く違う私の知らない田舎のタイ。
独特な世界観を堪能できる湿気を帯びたアジアンファンタジーとして楽しめました。
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