MasaichiYaguchi

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.9
スティーブン・キングの同名原作を「MAMA」のアンドレス・ムシェッティ監督が映画化した本作は、単なるホラーの枠を越えてエモーショナルに心に訴えるものがある。
原作は既に1990年に前後編でTVドラマシリーズ化されているが、本作は主人公たちの子供時代を描いた前半部分を映画化している。
メイン州の田舎町デリーを舞台に、謎の児童失踪事件が相次ぐ中、主人公たちにも邪悪な存在が忍び寄ってきて、様々な形で彼らを恐怖のどん底に陥れていく。
その邪悪な存在がタイトルになっている「ITイット」なのだが、“それ”はポスターやチラシでも分かるように、血を思わせる深紅の風船を持っている。
それが暗闇に浮かび上がる様は恐怖のアイコン以外の何者でもない。
この邪悪な“それ”と対峙する6人の少年少女たちは、“それ”に対する恐怖以外にも近親者の失踪、学校でのいじめや人種差別、親からのDVや過干渉等の悩みを抱えていて、そういう事情もあって彼らは周りから“負け犬”扱いされている。
彼らは“負け犬”同士、共通の恐怖、共通の敵である“それ”に対して「ルーザーズ・クラブ」として結束し、立ち向かおうとする。
この少年少女たちを見ていると、同じスティーブン・キングの代表作で映画化された「スタンド・バイ・ミー」を思い出す。
アンドレス・ムシェッティ監督をはじめとした製作陣は、本作をこの名作に準えていると思う。
孟子の「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」の言葉ではないが、挫折や葛藤、そして恐怖を乗り越え、彼らは団結して“それ”に打ち勝つことが出来るのか。
迫り来る恐怖の後の何とも言えないラストにある温もりが、「スタンド・バイ・ミー」のそれとオーバーラップします。