てぃだ

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のてぃだのネタバレレビュー・内容・結末

2.8

このレビューはネタバレを含みます

 最近「ホラー」の定義が分からなくなってきた。現実世界の方が怖いニュースが増えてきたせいだろうか。別に厳格な定義づけをする必要もないと思うけれど、少なくともここ数年は「怖い」というよりも「不愉快さ」を売りにしたようなそれが目立つようになってきたことだけは確か。それこそ『SAW』あたりから、拷問というか「人間の身体を如何に惨たらしく破壊し血を流すか」を追求したような作品が増えてきたせいか、何だかとても懐かしい気分になるホラーだ。もちろん時代設定(1988年)のせいもあると思う。何せこの時代、映画館では『バットマン』(Tバートン版)と『リーサルウェポン2』がリアルタイムで上映されている。まだスマホもユーチューバーも存在しない、アメリカはまだ911を経験しておらず、合衆国初の黒人大統領も登場していない。日本だと何とSMAPがデビューした年である。何となくこれだけで涙腺を刺激されそうになるではないか。







 「ペニーワイズ」なるピエロの姿をした不気味なバケモノ(どっちかというとRスコットの『エイリアン』ぽい)と対峙することになる本作の主人公はまだ幼い少年たち+一人の少女。主人公が少年たちなのに高校生以上じゃないとこの映画を見れないだなんて何だか皮肉な気もするけれど、とりあえずこのバケモノ、子どもたちにしか見えないというトトロ的設定。で、一応ペニー(って勝手に呼ぶね)が出てくる場面はそれはそれはとても気合いが入っていて、視覚効果やホラー映画おなじみの大音響などでガンガンにせめてくるわ急に画面に飛び出てくるわ巨大化するわetcでそれこそ座って楽しむお化け屋敷的に楽しめる。







 のだけれども、正直それ以外の場面がなかなか退屈だった(2時間超えはちと長い)。子供たちはスクールカーストの底辺の方に位置する「負け犬」とも呼ばれるべきヤツらで、それぞれに事情を抱えている(吃音だったり転校生でいじめられてたり云云かんぬん)。特に「親」との関係に悩まされている子供たちが多く、ペニーに立ち向かう前にまずは自分の「親」を恐れる子供たちの描写が出てくる(ヒロインの親父の描写は流石に気持ち悪い)。この辺りは別にいいんだけれども、そもそもコイツらの「友情」の描写がすごくうさんくさいし薄っぺらな気しかしない。どいつもこいつも基本的に「いい子」で何だかんだ言って「お互いのことを思いやっているいい奴ら」な仲間ばかり(不良は除く)。まるで週刊少年ジャンプの友情マンガ(ジャンプをバカにしてはない。私だってジャンプを読んで大人になった)。早い話がとっても青臭い(田舎の子供たちだから?)。ホラー映画というより『グーニーズ』的な冒険映画を見ているような気分になる。こういうのが好きな人にはたまらないんだろうけど(そもそも自分があんまり楽しめなかったのは類似作品である『スタンド・バイ・ミー』があんまり好きじゃないのが影響したのかもしんない)、ゲーテが語ったように、「友情なんてものはお互いに安心が保障されている時にだけ成り立つ人間関係」と思っているようなひねくれ者にはどうにもこういう描写をストレートにホラーに入れてくるあたり素直に受け入れにくい。最後の「血の誓い」なんてなんじゃそりゃ。こんな青臭い友情物語は正直どうでもいいから早くもっとペニーの大暴走を見せてくれ。
てぃだ

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