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IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のrollinのネタバレレビュー・内容・結末

2.0

このレビューはネタバレを含みます

昔の映画版は傑作やと思っとるけど、今回のは個人的には全力でNOでがんす。

まず昔のんが面白い理由は、大人になって地元を離れた主人公たちが再び現れたペニーワイズと戦うために再結集し、その過程で少年時代のIT事件が語られるという、20世紀少年のオリジナル版とも言うべきストーリーテリングの構造にあって、一連の物語やからこそシルバー号の感動がある訳やけども、
何の情報も入れず観始めた本作が少年時代しか描かれないまま進行するに従って膨らみ始めた不安は、ペニーワイズにより遂に現実化されてしまったのです。
ラストの、“chapter one!どや!”の文字と、ヤツの高笑い。
やったぜ!!て言うと思たかあほたれ!

本作のガキ共に施されたいかにも“ジュブナイルもの”っぽい、より多くの共感を得るための演出の嘘臭さにはゲロ吐きそうやし、映画に於ける個性ってのは既出の型からはみ出して初めて獲得出来るもんというのが持論です。コップ・カーやキングス・オブ・サマー、アタック・ザ・ブロックといった近年の傑作との違いはそこやね。
ただおデブのベンと不良のヘンリー役の子はええ顔してました。ヘンリーが改心してベジータ的立ち位置になるとか新しいことやって欲しかった。正当防衛云々ではなく、マイクに対して映画内で然るべき罰が下されない点は大いに問題あり。

あとこれも大人編と分けてしまったことの弊害やけど、ペニーワイズが子どもたちの不安や恐怖の対象を具現化してビビらせるくだりを弱虫クラブ7人全員分やってしまう作業的な構成は心底どうかしてる。スーサイド・スクワッドの再現か!くらい苦痛に感じたし、演出力不足の証明でしかない。つかこの映画、構造も演出もスーサイド・スクワッドそっくり。

最後に本作の劇伴担当した奴、この人ほんまにあほやと思います。ペニーワイズが出て来て(というか出て来すぎ!)観客を驚かせようとする瞬間のSEと同じレベルで、終始ロード・オブ・ザ・リングみたいな大層な音楽が流れ続けているのです。全体を通して抑揚が皆無なので恐怖の感じようが無いし、ペニーワイズの造形、音楽共に昔の方が断トツで怖くて良い。音楽はブレードランナー2049でハンス・ジマーのサポートをしていたベンジャミン・ウォルフィッシュ。妙に納得。

あまりの稚拙さとスベり具合に観ているのが恥ずかしくなりました。やはり大人になったビル=スティーブン・キング自身の目線の不在は大きい。
今まで一回もホラー映画を観たことない人向け。つかホラー映画でもなけりゃ、ましてやスタンド・バイ・ミーを引き合いに出すことすらお門違い。今年のワーストでがんす。
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