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IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のKEYのレビュー・感想・評価

4.0
実はこれ、二部作らしいです。ホラー苦手な方でも楽しみやすい映画だったと思うので、まだ観に行ってない方は是非〜!

S・キングの長編ホラー小説の映画化。
原作では、少年期(1958年)の事件と大人(1985年)になってからを交差させて、同時に進める少しややこしい構成らしいのですが、今回の映画化ではそこをきっぱり分けています。
だから今作『IT/イット 〝それ〟が見えたら、終わり』は、少年期の事件のみの映画化になります。
これがS・キング原作の『スタンド・バイ・ミー』にも似ていて、(というかわざと寄せていて)凄く良いんです。
特にラストのそれぞれの方向に帰って行くシーンなんかは、まさに『スタンド・バイ・ミー』のあのラスト。

ビル・スカルスガルド演じるペニーワイズ(この不気味な演技にも注目)に立ち向かう主人公たちの姿を見たら、応援したくなること間違いなしです。

しかしまあ今作、80年代という設定もあってか、大人の子供に対する扱いが非常に鼻に着く。性的な虐待を実の娘にする父親や、ナイフや銃を息子に持たせる警官。挙げ句の果てに屠殺用の銃って…そんな物騒なもん持たせるなよ💦と、ツッコミどころ満載。
そんな中、主人公の一人である弟を無くしたビルの父親は冒頭ワンシーンしか映らないが、とても印象的で最後まで頭から離れなかった。
弟が行方不明になった排水溝の模型を作り父親に見せると、「良いから早く立ち直ってくれ」「忘れてくれ」と言うのだ。何気ない一言だが、間違っていない。
父親自身も息子の死を忘れられるわけがない。しかし(ここには登場しない)妻が居て、残された息子も居る父親としては、いち早く立ち直らなければならない。家族を支えなければならない、それが大人としての責任であることがこのワンシーンだけで汲み取れた。
また子供にそれを言うのも残酷である。(子供の心の傷の修復には時間をかけるべきだから…)

舞台の田舎町で、何故共通の悪夢を見るのか?それは恐らく「恐怖は伝染する…」と言った趣旨だったのだろう。
それぞれが恐怖を味わい、隙を見せた時に〝それ〟が現れる。
ペニーワイズを追う理由が明確にあるのはビルだけであって、他の子供たちは事件から目をそらせば普段通り生活できる。
しかし自分が経験して居ないから…と言うのは言い訳で、他者の感情を想像することは誰でもできるのだ。逃げてはいけない。
その思いやりと言うか、ホラー映画には珍しいほど人間的な感情を映し出せている映画だった。
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