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IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のsatoshiのレビュー・感想・評価

4.1
 現在、大ヒット中のスティーブン・キング原作のホラー映画。正直、ホラーは苦手なのですが、食わず嫌いは良くないし、久しぶりに単純に怖い目にあいたいなという欲求が急激に高まっていたので、鑑賞しました。

 しかし、正直、そこまで怖くありませんでした。ビックリはしましたが、恐怖を覚えるほどではありませんでした。では本作は詰まらなかったと言われればそうでもなく、とても面白かったです。ただし、ホラーとしてではなく、ジュブナイルものとしてです。

 作中の敵、”イット”ことペニーワイズ。こいつは子どもにしか見えず、子どもが最も怖がる姿に化け、恐怖を煽り、心の弱さにつけこんできます。つまり、こいつは恐怖の象徴であり、人の心の弱さを表出させる存在なのですね。いじめられっ子たち「ルーザーズ・クラブ」は、みんなで力を合わせ、ペニーワイズと戦います。それは自身の恐怖との戦いに他なりません。誰でも怖いものはある。でも、それを克服してでも助けたい人間がいる。それは友達だったり、家族だったりするのです。本作は「ルーザーズ=負け犬」と呼ばれている彼らが、「街のため」「友人のため」に立ち上がり、自らの恐怖に立ち向かうのです。

 これだけでも泣かせる話なのですが、他にも、終盤、一旦バラバラになった彼らが友人が攫われたことで再集結する下りとか、リッチー君の最後の行動とか、熱くなれる要素もたっぷりでした。最後には自分たちの「LOSERS CLUB」を「LOVERS CLUB」にするところとか、子どもの精神的成長も描いていたと思います。

 本作はジュブナイルものとしての側面を強く持っています。素晴らしい点はいくつもあるのですが、まずは、あの年頃の子どもたちの描写が本当にリアルで素晴らしかった。女子が入ってきてソワソワする下りとか、リッチー君の調子乗ってる感じとか、会話の下ネタとか、初恋の甘酸っぱさとか。思わず自分の少年時代を思い出しました。

 また、いじめっ子との川を挟んだ石投げとか、会話の下ネタとか、いちいちノスタルジーを刺激されます。ですが、リアルだからこそ、上述の「恐怖を克服する話」が現実的に思えてきて、ホラー要素がいい感じにマッチしています。

 このように、本作はペニーワイズという恐怖の象徴を通し、思春期の子供たちが自身の恐怖を克服し、成長する姿を描いていました。これは寓話的な話でもあります。恐怖は誰にでもあり、大事なもののためにそれを克服することは、とても重要だと思うからです。

 最後に。本作の舞台のデーリーって、ジョジョ第4部の設定上のモデルだったんですね。不勉強なもんで初めて知りました。
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