Yoshishun

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のYoshishunのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

先述しておくと、TVスペシャル版となる旧作は正直嫌いです。とは言っても、決して子供パートが嫌いというわけではなく、大人になった少年達の回想という構成も嫌いではないです。ただ大人パートが本気でダレたと思いますし、何なら結末が気にくわなくて……前半☆3.5なら後半は☆1.5位なんですwだから元々子供パートとなる前半は別に嫌いというわけではありません。

その点、今回の映画版は、過去と現実の交錯する原作の構成の中から敢えて過去編だけを切り取った作品でしたので、回想であることを考えずに、純粋にホラー映画としてかなり楽しめました。

驚かせ方とかは、ジェームズ・ワン監督の『死霊館』や『インシディアス』に似たものがありましたが、子供が主人公であるが故に子供視点でのトラウマや恐怖が描かれていました。そこに少しだけ懐かしさを覚えることもあり、かつてのホラー映画の醍醐味が表現されてるかのよう。

アメリカ人のトラウマの象徴と云われるのがピエロであり、本作でもそれがペニー・ワイズに表されています。それぞれが抱える恐怖の対象に姿を変えて襲いかかる彼は狂気そのもの。出番こそは少ないものの、見た目のインパクト抜群で旧版に比毛を取らない怖さでした。

また原作の50年代から舞台を80年代に移したことも幸いして、かつてのアメリカの町並みを表現したような懐古的な世界観に少しばかりうっとり。演じる子役も恐ろしいほど一昔前風でまさに『スタンドバイミー』の世界に迷い混んだよう。そんな世界観の中でも"恐怖に立ち向かう子供達の成長物語"がしっかりと描かれているため、映画での彼等と同様に少しずつ恐怖描写に慣れていくので不思議です。

恐怖に立ち向かう過程において、人殺しを正当化してしまう点や単純に描写として疑問に思うシーンが多い点などが個人的には不満でした。驚かせ方がパターン化するのはそこまで気にはなりませんでしたが。

冒頭10分の残酷シーンでこの映画の成功が約束されたようなもので、中途半端さがない正統派ホラーとしては満点だと思います。音楽も雰囲気もピッタリで、現代にも通じる集団内格差やイジメへのメッセージ、そして恐れやトラウマを克服していく前向きなストーリーも出来が良く、全体的には実写化困難と云われるキング原作の映像化作品の新たなる傑作に間違いないです。ホラーながらも数々のエンタメ要素も入れ、130分という長さも全く感じさせない映画だったと思います。

さて、旧版でもそこそこ楽しめた少年パートとなる第1章。問題は次の大人パートとなる第2章。恐ろしいほど失速した旧版と同じ末路を辿ってしまうのか?あるいは今回の第1章をも凌駕してしまうほどの傑作となるのか?
スタッフ、キャストは世界中から作品を批判される恐怖と闘いながら、この殺人ピエロと少年達の物語にどう決着を着けるのか、今からとても楽しみです。
Yoshishun

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