近藤真弥

LOGAN ローガンの近藤真弥のレビュー・感想・評価

LOGAN ローガン(2017年製作の映画)
4.6
傑作。X-MENシリーズを知っていればより楽しめるのはもちろんのこと、本作で見せるローガンの生き様に心打たれた。ミュータントの子どもたちを守るためにローガンが奮闘するんだけど、それが罪を重ねてきた者の落とし前として表現されている。

超人的な治癒能力のおかげで長年生きてきた、いわば歴史の目撃者であるローガンというキャラクターを上手く活かした物語は、人類の罪を示すものでもある。そんな罪の表象としてローガンは描かれ、“では、その罪深い者が守るべきものはなんだ?”という問いを本作は投げかける。もちろん、罪深い者とは私たちのことで、守るべきものはミュータントの子どもたちなんですけどね。そういう意味では、ストレートなメッセージが込められています。エンディングはジョニー・キャッシュの「The Man Comes Around」ですし。

ミュータントの子どもたちには、社会的弱者やセクシャル・マイノリティーなど、さまざまな姿を重ねることができる。終盤でローガンがローラに残す言葉は、暴力でしか道を切り開けなかったローガンの哀しみが表れると同時に、君たちはこうなってはいけないという切実さが出てましたからね。このあたりも、ローガンに超人的能力があたえられた背景をふまえた製作側の素晴らしい仕事だと思う。

さらに見逃せないのは、この子どもたちがただ守られるだけでなく、ちゃんと抵抗してるところ。なので、弱者を救う強者の救世主物語にはなっていない。実際ローガンだって何度か子どもたちに助けられてる。本作のローガンは驚くほどボロボロですから。

それでも、戦わなきゃいけない理由がローガンにはある。そこに心がすごく揺さぶられた。ラストの十字架をXにするシーンでは、僕の目から生暖かい粒がこぼれました。
近藤真弥

近藤真弥