えんさん

LOGAN ローガンのえんさんのレビュー・感想・評価

LOGAN ローガン(2017年製作の映画)
4.0
ミュータントが絶滅の危機に瀕する近未来。老いたローガンも特殊能力である治癒能力を失いつつある中、師でもあるチャールズ・エグゼビアからミュータント唯一の希望である少女ローラを守るよう託される。しかし、ローラには危険な襲撃部隊の魔の手が迫っていた。謎に包まれた彼らの存在に疑念を抱きながら、ローガンはローラを連れた逃避行を始めていくのだった。「X-MEN」シリーズに登場するウルヴァリン(別名ローガン)を主役にしたスピンオフ第3弾。ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリン最後の闘いを、「ウルヴァリン:SAMURAI」のジェームズ・マンゴールド監督が描いた作品です。

マーヴェル・コミックを代表する人気コミック「X-MEN」が映画化されたのがちょうど2000年。昨年、「X-MEN」シリーズとしては最新作となる「X-MEN アポカリプス」が公開になりましたが、その2000年の第1作からシリーズの顔として、スピンオフ作にも顔を出し続けたヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンのラストとなる作品になります。「X-MEN」シリーズについてはアポカリプス以後も続いていくことが発表になっていますので、ウルヴァリンというキャラクターも以後は別の俳優が演じていくとは思いますが、本当に17年間シリーズの顔をして活躍し、自身のキャリアを大きくしていった俳優でもあるので、同じく本作でチャールズ・エグゼビアを卒業するパトリック・スチュアートとともに、ファンとしては非常に感慨深いものがあります。でも、「X-MEN ファースト・ジェネレーション」以降、ジェイムズ・マカヴォイやマイケル・ファスペンダーなどの次世代俳優に物語としても上手くブリッジできているので、ちょうど親から息子世代に変わったような感覚になり、その世代交代というところが本作の中でも、ウルヴァリンからローラへとミュータントの魂というのが受け継がれているようにも感じて、シリーズを位置づける作品としても、(スピンオフながらも)とても心に残る形のものになっていると感じます。

その中で、本作のベースになっているのは、作品中にもうまく引用されているように西部劇のスタイルというところに尽きます。日本流でいえば、武士道の味が流れる作品というところでしょうか。作品中でも、ウルヴァリンは人をバッタバッタとなぎ倒すのですが、そうした人斬りのような負の一面を内部に抱えながらも、一途に守りたいものは守っていく。だけど、そんな彼も所詮は傷物。自身の危険などは振り返らず、負けそうな状況であっても決死の戦いを挑んでいく姿は西部劇におけるヒーローであり、真のサムライの姿でもあるのです。同じスピンオフ作ながら、「ウルヴァリン:SAMURAI」というタイトルで、中身はウルヴァリンをちょっとオフザけな日本に出したマンゴールド監督ではありますが、本作では「〜:SAMURAI」の何十倍も物語に力がこもった作品だと感じます。ウルヴァリンもそうなんですが、作品の中で命を落としていくそれぞれのキャラクターもとにかく美しい。マカロニ・ウエスタンもビックリなほどに、殺戮場面が多い作品ではありますが、ちゃんと分厚い物語になっているので全然嫌味を感じない。「X-MEN」ファンには垂涎の作品になっていると思います。