オレンチ

LOGAN ローガンのオレンチのネタバレレビュー・内容・結末

LOGAN ローガン(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『シリーズの時系列や登場人物の生死などの事実関係も一致しない。』
──ヒュー・ジャックマン。

ヒュー・ジャックマンがメイキングでそう言っていました。
僕もそう感じたし、同じように感じた人も少なくないはずです。
ですがそこには作り手としての意図があります。
その意図と僕が本作に魅力を感じた部分を少しずつお話していこうかと思います。

その前に大変お久しぶりです。覚えてくれてる人いるでしょうか?w
久々にレビューしようかなと思ってログインしようとしたら作り直したアカウントにはログインできませんでした。
あっち行ったりこっち行ったりと申し訳ないですが、今後はまた細々とやっていこうと思うのでこっちでよろしくお願いします。

さて本作に話を戻しますが、カラー版を字幕で2回、モノクロ版を字幕で1回、あとは特典映像にあるメインキング及び未公開シーンを1回づつ鑑賞しました。
今後は2回以上観た作品のみレビューしていこうと思います。
(そうじゃないと理解力が弱い俺が理解仕切れんw)

カラー版も素晴らしかったですが、4KHDRのモノクロ版はまた違った味わいで非常によかったです。
特筆するのならば、リムジン・クライスラーの漆黒さがとにかくカッコ良いし、夜のシーンは暗闇の不気味さを増し、それを照らす街灯の明るさがまるで舞台を照らすスポットライトのようにも見えました。
モノクロノワール版で延々とお話しできそうなんですが、それでは主旨が変わってきてしまうのでこの辺でやめます。

さて冒頭でも述べたようにシリーズの続編としてはあまりにも過去作と繋がらない件。
明らかに時系列は繋がらない。しかし【自由の女神での出来事】は起こっているっぽいし、
スピンオフ前作の「ウルヴァリン:サムライ」を思わせる日本刀も飾られています。
辻褄が合わないことにモヤモヤを感じていたのですが、
あるシーンでローガンは「X-MEN」のコミックを握りしめながら重要なセリフを言います。

「これはコミックだ。事実を基にしているが現実は甘くない。現実では人が死ぬ」

メイキングで「シリーズの時系列や登場人物の生死など〜」の後にヒュー・ジャックマンはこう続けます。
「今までのどの作品よりもキャラクターの心の深い部分を描きたかった。人間ドラマを撮りたかった。」

観客がこれまで観てきた「X-MEN」のコミックや映画が、事実を基にしてはいるがそれがヒロイックに美化されていたとしたら?
つまり、本作は我々が観てきた美化されたヒーローのウルヴァリンではなく、もっと血生臭く、悲しみと暴力の中を生きてきたローガンの物語なのだと思います。
そう思うとこの上なくキャラクターに深みを感じます。

《これは現実なんだ》ということを示すかのように道中、関わった家族に悲劇が降りかかります。

本作はさらにもう一つ、現実を突きつけます。
歳をとり、かつての面影がなく衰弱しきったプロフェッサーXことチャールズ・エクゼビアです。
パトリックスチュワートは本作のプロフェッサーを演じるにあたり3キロの減量をしたそうです。

かつてローガンの力を制御し、導いてきた存在が本作では完全に立場が逆転し、
本作ではローガンが介護する立場にあり、これは現実でいずれ誰もが直面する問題です。

そういった作り手の意図が本作を非常に味わい深いものにしていると僕は感じました。

そんなローガンが最後に行うこと。
それは自分たちの同族の未来を担う子供達を救うこと。さらに言えば自分の娘を救うこと。
これはローガンが200年で犯してきた罪を洗うロードムービーなのだと思います。
立ちはだかるはX-24こと己の分身。しかもこの分身は自分の凶暴性だけを残した、ローガンが一番観たくない自分の部分です。
その凶暴性をかき消し、家族の愛を知り、散る。
これ以上、有終の美がありますでしょうか?

またリアリティはタイトルに反映されています。
スピンオフである前2作には「ウルヴァリン」が付きました。これは言わば彼の芸名であり、フィクションを彷彿させるもの。
だからこそ今回のタイトルは「ローガン」なんだと僕は思います。


さらに特筆しておきたいのが、ローラを演じたダフネ・キーンちゃん。
最高でしたね。間違いなく天才子役と呼べる部類だと思います。

なぜなら、彼女物語の終盤までセリフが一切ありません。
それなのに間違いなく名優であるヒュー・ジャックマンとパトリック・スチュワードの影に隠れず、
むしろちゃんとした存在感を放っていたと思います。

パトリック・スチュワートがダフネ・キーンちゃんに対して興味深いことを言っていました。
(あるシーンの撮影が終わったタイミングで)
「このシーンの撮影が終わってしまって寂しい。映画の撮影はどんなにいいシーンを演じても1回で終わってしまう。だが舞台はいいよ。素敵なシーンを半年以上も毎日演じれるんだ。君は舞台女優を経験しなさい。君にはその才能がある。」

今後のダフネ・キーンちゃんも楽しみになる一作でした。


最後に、どうでもいいっちゃどうでもいいんですが、子供達を守るローガンが「トライガン」のニコラス・D・ウルフウッドの死に様に被りました。共感してくれる人いるかな?w