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LOGAN ローガンのハルのレビュー・感想・評価

LOGAN ローガン(2017年製作の映画)
4.5
時は2029年。ミュータントがほとんど死滅した世界。ウルヴァリンことローガンは、その数少ない生き残りであるが、体内に埋め込まれたアダマンチウムに蝕まれ、身体能力と自然治癒力が著しく減退している。ある日、市街でリムジンのドライバーをやっている彼のもとに、メキシコの病院から逃げ出した看護師の女が年若の少女を伴って現れる。少女は、アメリカ政府によって秘密裏に開発された殺人兵器(ニューミュータント)であり、ローガンの遺伝情報を受け継いだ娘であった。ローガンは、政府の人間に追われながら、かつての師・プロフェッサーXと娘を連れて、約束の地(エデン)を目指すことになる。

「ウォーク・ザ・ライン/君へと続く道」、「3時10分、決断のとき」を手がけたジェームズ・マンゴールド監督の傑作ヴァイオレンスムービーである。

制作にあたり、マンゴールド監督が最も意識したのは、1953年公開の傑作西部劇「シェーン」である。

シェーンは、流れ者のガンマンが悪徳牧場主を退治するという話で、本国アメリカで絶賛されたのみならず、日本においても時代劇の股旅物を彷彿とさせてヒットした。

本作「ローガン」は、シェーンのストーリーを基本的に踏襲しながら、そこに描かれた英雄像を、老いたるミュータントに当てはめている。若きミュータントたちを守るため最期の闘いに身を投じるローガンは、開拓民一家を守るため巨悪に立ち向かったシェーンそのものだ。

シェーンは悪を退治したあと、自らを慕う少年に、「人を殺してしまった人間はもう後には戻れない」と言い残して、谷を去る。シェーンは開拓時代の終焉とともに自分のような人間(殺人者としてのガンマン)も消えるべきだと考えていた。

このことは老境に差し掛かったローガンにも言える。ゆっくりと衰退していく世界と心中するように、いずれ、彼も、時代から退場する運命にあった。

この物語は、そんな滅びゆく男の、最後の足掻きを描いた、「終末の西部劇」なのである。
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