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映画よ、さようならのsasaのレビュー・感想・評価

映画よ、さようなら(2010年製作の映画)
3.6
大部分は画面にほとんど動きがなく、5分間にわたって映画論をぶつシーンもあるので、前半は正直かなり退屈に映る。文化の担い手としての喜びはなく、ただ使命として淡々と苦しげに描かれている印象。
しかしシアターが閉鎖してしまうと一転、まさに憑き物が落ちたように、髪を切り荷物を捨て、好きな女性の職場を訪れてデタラメの講義をしたり階段で踊ったり、そしてついに彼女をデートへ誘う。

劇中『観客を育てるということ』『映画を知るということ』が論ぜられるために、商業化著しい映画業界への批判とも取れるが、この作品そのものはむしろ「映画は人びとの日常にとってどのような存在か?」という、より純粋な問いかけではないかと思う。啓蒙の義務に追い詰められていたホルヘが、"観客"として屈託なく映画を愛せるようになったことへの祝福なのではないだろうか。
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