川田章吾

藍色夏恋の川田章吾のレビュー・感想・評価

藍色夏恋(2002年製作の映画)
3.8
この映画を見た時に思い浮かんだのは、ムンクの『思春期』という作品だ。思春期の女の子の不安を描いた名作だが、主人公のモンと重なるところがある。

そもそもこの映画の構造はフランスとの合作とのこともあり、大きな物語仕立てになっていない。
そのため中盤まで、モン、チャン、リンの三角関係が中心に展開される。こうした小さな物語系列で大事なのは徹底したリアリズムと役者の演技力。
この作品は見事にその二つの要素が合致していて、退屈しない。
そして、中盤までのそうした人間模様は全て伏線だったのである。

監督の演出も良く、小さな物語を印象的に見せるように様々な工夫を行なっている。それはとても良いのだが、あの中盤の展開の後、冗談でも「さっき言ったの嘘でした〜」は、言ってはいけない。
思春期の子たちの葛藤やテーマ性の難しさを強調したかったのかもしれないが、見てる側はオチを明かしたのにそれを否定されると混乱してしまう。

ただ、全体としてはベリーグッドな作品でした!
川田章吾

川田章吾